Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

目的地の周辺

随分ざっくりとした地図で 僕はどうにも方向音痴で ハナから覚束ない気分で でもおくびにも出せなくて いかにも自信たっぷりに 背筋を伸ばし大股で歩き ここだと思う角を曲がり うん、多分きっとこっち …あれ、おかしいな ここにあるはずの郵便局が どうも見…

不惑の終わり

なんつうかやな数字だよなあ うーん、そうかなあ 昔っからそう言うじゃねえか 死んで苦しむってんだから 他の迷信はうっちゃっといて そこだけ気になるもんなのね わかんないけど大丈夫だって 五十過ぎたら皆不幸なわけ? いやまあ、そうじゃないけど 設定あ…

セピアの彩色

自分の錆色の人生とは 全く関係ないことの結果が 一瞬遠くの色彩を照らした 僕は気付かないふりをした 朝食べたままのラーメン鉢に チンしたパックご飯をぶちこみ パカッと卵を割り醤油をたらし 立ったままかきこむ午前0時 あいつがいた頃は うまくもない飯…

平常時パトロール

いつもの診察が終わって 増えていた体重を気にして 緑道公園を端まで下って ぐるりと幹線道路に出て 疲れたら乗るつもりだった 路面電車を右手に見ながら まあまだどうにか行けるな 大股でのしのし歩いた あれこんなところにお寺が また随分足の短い犬だな …

遺言アップデート

どうにもならないことは盾 ほら、しょうがないですよね どうにか言い負かしたいだけ それじゃあ仕方ありませんね ほんとうに言いたいことを 言いたいひとに言うんだよ 言わなければよかったと 言えばよかったが殺すもの 誰も傷つけたくないひとは 自分こそ傷…

四次元の内訳

うたを聴いた時に その登場人物を思い描き 知らない言葉は適当にぼやかし 五分かそこらの試写会 お互いに見せあっこ出来たなら こんな風にイメージしてたんだ あたし、駅の場面だと思ってた 待たされるやつ、こんな男前か? つくったひとが半透明で現れ ま、…

悩みごとの表層

知り合いが悩んでいて それはこれこれこんなことで 私どうしたらいいでしょうって それはおせっかいの丸投げ 勉強できないモテない仕事ない 世はありふれた悩みでいっぱい 誰だって日々あれこれ忙しい 正直言って構っちゃいられない それでもそれが本人の悩…

つまらぬものでは

何だったらよろこぶのかな あんまり安っぽいのもな でも高すぎても気兼ねだよな 他とかぶるのもダサいしな 何が好きだって言ったかな 何かきらいなものあったかな 邪魔にならない方がいいよな でも印象は多少残したいかな 一緒に行けば間違いないけど 気持ち…

汗水の受取人

さりげない新技術や ちょっとした工夫が なんのためだったか 見失うこともあるんだ ここんとこ徹夜続きで ろくなもん食べてなくて レッドブルは四本目 アイディアを振り絞れ 朦朧としながらひたすら 走らせてちゃんと動くか 対応に追われてフラフラ とにかく…

ひとからげない

余計な特別扱いをするな 誰とも変わりゃしないんだ ちっとは特別扱いしろよな 君たちとは違うんだから どっちも心底ほんとうで さすがにこれは無理だよね まあこれくらいは出来るよね どっちもなんだかムッと来て でもその苛立ちってきっと あらゆる心の中に…

無遠慮なむき身

ひとを笑わせたり元気づけたり 励ますような役として生きたい そう決めてあまり間もない旅先 不機嫌に黙りこむ目の前の友達 あの時は焦ったし参ったなあ 楽しい時は楽しくやってたから なんとかなるとは思ったけどさ 怒らせるつもりはなかったんだ 旅行って…

ヒマツブシモドキ

明け方にはリリリと虫が鳴く そうか、元に戻ったんだろう 暑いとそれだけで頭が沸く ありもしないのに惑わせる希望 ありがたいね ただでも幸せなのに思われて 悪い気はしないよそりゃあね 気休めや励みになればそれで お裾分けってのは ことのついでだからさ…

おかめひょっとこ

ひとの気も知らないで ひとの気も知らないで? 別になんでもねえって オカメインコかよお前 ああいう鳥ってすごいなあ あん?何が 話わかってるみたいだから んなわけねーだろばーか 何イライラしてんのよ 別にしてねえよそんなの ほら爪んとこひっかかない…

こぼさない涙の川

よく知っているひとが お空の向こうへ行ってしまった よく知っていると言いながら 会ったことは一度もないんだ 悲しむほど好きだったかどうか 考えてみたらよくわからないんだ お葬式に行くってわけでもないさ でもいなくなるってさみしいな そのひとが残し…

ヒヨコの選別

これはまた今度でもいいですかね あ、じゃそっちは今やりますので 申し訳ありませんお手数おかけして 私ちゃんとしたこと言ってるよね? ゲームのスポットを探して歩く あっこれかと言って立ち止まる ひと通り操作を終えて我に返る これってヘンなひとに見え…

青い尻とおっさん

ごきげんでいるおとなってのは そうなりたくてそうしてるんだ 不機嫌になるのは割と簡単さ ひとのせいだと思えばいいんだ 言霊 悪いことは口にしない 出来すぎたひとが煙たい時もあり ふと漏らす弱音に胸躍る夜もあり そのあたり さじ加減が難しい でもいく…

怒りの合いの手

うちの息子と喧嘩らぁしたことない こらっ、言うちゃろう思うた時に パッと見たらもう逃げておらんし 勘がええんかなんか怒ることがない 結婚前に自慢たらたらよと母は苦笑 おとう言うたら勘ニブ男じゃろう 私が言うと そう思うじゃろう? それのにからええ…

気付きの順序

バイトで渡された着ぐるみは 近くで見たら薄汚れたパンダ すえたような臭いにむせながら 頭のてっぺんから汗をかいた 友達に見られたくねえなあ とにかく三日の辛抱だからな おおい、何ボヤボヤしてんだ あっはい、今行きますから 風船につけたパンジーの種…

笹の葉の舟

おいしいものが食べられますように 短冊にそう書いてあったと母は笑い 星に願うようなことじゃなくない? もっと叶わないこと願えばいいのに 口では笑ってそう茶化しながら じゃあ自分なら何を願うのかな 神信心すらあぶなっかしいのにさ こんな時だけ虫がよ…

うっかりvs方向音痴

ああもう、悪かったよ 何も泣く事ないだろ ごめん、そうじゃないのよ そうじゃないってなんだよ? あなたのせいにしちゃった方が 楽だけどそうもいかないわ まず、ご飯食べ損ねたのね今朝 …何の話してんだお前は まあ聴いて、なんでかっていうと 夜更かしと…

ヘルツとコール

死んじゃいたいと言いながら ラジオのスイッチを入れるんだ そんなのおくびにも出さずにさ 変だけど割とよくある話なんだ 俺が冷たくあしらったら 糸が切れるかも知れないのかな そんなこといちいち気にしたら 黙るしかなくなるだけだからさ 急に元気になっ…

屈託の忘れ方

やあこっちこっち、お疲れ すみません、遅れてしまって いいよいいよ、大変だったね あ、じゃ私、とりあえず生中で かんぱーい かんぱーい イカそうめん頼むけど他にない? えっと、じゃあ茶豆と揚げ出し… なんなのお前、豆ばっかり食って いや、ダイエット…

人肌と理想

あなたに言うときっと怒るから 言えなかったと彼女は泣いた あなたは正しいことが好きだから あなたの理想はいつも高いから あのひとはね、あたしのダメさを そのまんまで抱いててくれるの あなたはいつもこう思ってんのよ "俺がいいように言ってやってるだ…

迷子と道案内

振り返ったそのちっちゃい子は 泣いていたらしかった まずい時に声をかけちまったな ひと違いだと誤魔化すか迷った なあに? っと…今大丈夫?訊いてもいい? 誘拐犯と間違われないように 努めて聞こえよがしにハキハキ うん、いいよ 迷子になっちゃったんだ…

ふつつか夜話

ダメな子だった話を持ち寄り 焚き火のそばで順番に語り いつもなら茶化す面々なのに 不思議としんみり優しい心地 あたし自分の名前が書けなくて 形が似てるから、ちとさって いっつも反対に書いちゃうのね そういや靴も逆に履いてたっけ 僕は好ききらいが多…

出納と帳消し

前年から学校に来ない生徒がいて 新米教師だった母は校長に頼まれ キーコキーコと自転車に乗って 様子を見に行く暮れ方の街の外れ メモを見ながら右左右で路地の裏 変にかしいで見えるバラックが 立ち並ぶ中にその子の家はあった スカートをはたいてノックす…

半可通の点取り

でも話せば分かるかも知れない 聞いてやしないからわからない 頑なに拒んで聞く耳を持たない こいつは厄介すっとこどっこい 面子だか発言権だかハッタリだか ナメられちゃいけない事情が あるらしく眉しかめ腕組みのまま しらけて言う やっぱ駄目だなあ 君は…

元気は元の気

清く正しく美しく やり過ぎないほどほどの感情 健全で心やさしく明朗快活 根に持たなくて爽やか真っ当 生まれつきのひとも稀にいて 努力でそうなるひともいるね 努力でそうなったひとって そう出来ないひとを叱るよね 努力で自分を制御できるひとは 元の浮き…

委任状の宛先

世の中がんばってるひとってのは もっとがんばれるんだ あるいは 君よりがんばらないやつの方が いい目見てるぜ 悔しくないのか どっちもどっちと苦笑いしながら がんばってるって言うんなら ちゃんとすればって思うけどさ どのみち僕とは違う人格だから つ…

望遠の幸せ

お二人が幸せだなあと思うのは どんな時か教えてくれませんか そうだなあ、妻の飯はうまいから 健康でいさせてもらえてるのかな どんな時に幸せを感じますか やっぱりね、子どもがいるから 成長をそばで見届けたいっていうか 産んでくれてありがとうとは思う…