Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

クロスワードかるた

綴紐がほどけてしまった本を
丹念に拾い集め順に並べると
落丁乱丁虫食い越しの筆あと
七並べなら「誰が止めてるの」
 
未来の希望の話かもしれない
上を下へのどんでん返し
何か読み忘れてやしない?
目がかすむ契約書の但し書き
 
基本の基本の基本の設定が
何度でも初期化されるから
〜ぼんさんがへをこいた〜
〜だるまさんがころんだ〜
 
わーっと一斉に逃げ出して
隠れたり知らん顔したりして
じゃあまた明日にでもね
ご名算 ご破算に願いまして
 
キリがないなんてことは
この世にはない道理なんでさ
だから このままでも まあ
一概に悪いとも言えないよな
 
長い遊びに飽きないように
千切ったページを隠したり
ハートの列だけ止めてみたり
しているのならそれでもいい
 
わけがわからないとまでは
言えないのがほんとのとこか
白か黒かで言えない段階なら
合わせるのが次善ってだけさ
 
お作法のいいクイズの場合は
正解に「へぇ!」「はあ?」
どっちだっけな忘れちゃった
一個目のヒントもう言った?

おあまりの餌

笑えなくて涙が出る時だって
まあなんとかなるんだよね
僕にはいい頓服があるからね
飲むととかくだるくて眠くて
 
シートから外した瓶の中の薬
毎回ざあっと手のひらに出し
ちょっと安心して大方瓶に戻し
その中の一粒だけつまみ出し
 
こんなちっちゃくて丸いのが
どう働いてるのか知らないが
ぼんやり起きた時の母の言葉は
「えらい苦しそうに寝よった」
 
保身なのか幸せ自慢なのか
その方が伝わると思う慢心か
他の意図が隠されているのか
そんなの知ったこっちゃないや
 
誰のための話か知らないが
君が僕ならそれを聴きたいか
僕はもう一生分我慢したから
その手の話には乗らないんだ
 
君を操る横暴もありえないよ
そんなことはわかってるよ
なんとかするしかないんだろ
究極は僕だけ死ねば済むこと
 
こうやって僕の中の僕の芽は
ひとつずつ踏まれていくから
馬鹿な妄想もいずれ枯れるさ
今までもずっとそうだった
 
書いてあるだろそうさ冗談さ
こうやって都度切り離せれば
僕本体は生き延びるんだから
君も同じならしかたないよな

信じない様

大仰な話はなんか胡散臭い
そりゃ信じるのは勝手だし
わざわざとめだてはしない
それぞれ崇める神はいていい
 
信じない自由もあるはず
もっとこう手で触れられる
具体的な何かが欲しくなる
それはそれで人の情だろう
 
うーん、例えばそうねえ
愛そのものには触れないよね
言葉にしたことあったっけ?
じゃあ愛はないのかな、って
 
欧米人じゃないんだし
愛だなんだ言う方が怪しい
言葉にしないことの中に
含まれてるもんじゃない?
 
さみしいのがイヤだとか
ゴミ捨てめんどくせえとか
おっぱい触ってたいとか
そういうのと一緒なんだ
 
ちが…うとも言えないけど
そりゃそれだけじゃないよ
そんな俗っぽい欲よりも
もっとこう神聖なものだろ
 
ほら、出てきたじゃない神
信じないを守り通すうちに
信じない様を信じてない?
内角来い!は誰への祈り?
 
もうわかんねえよそんなの
ゴミじゃねえし分けねえよ
言わなくてもわかるだろ
誰に?何を?のとぼけた顔

空蝉を裏返す

なんででぇ言われるけえど
自分でもようわからんのよ
幽体離脱?じゃねえけど
蝉が羽化する途中の感じよ
 
わからん?そうよなあ
じゃけわからん言ようるが
自分の後頭部見とるような
平生からそんなんかなあ
 
昔からそんなかったかは
えろう憶えとらんなあ
歴史も成績ようねえけえな
要るこたぁ憶えれんでな
 
なんかほんでもあれよ
自分をストーカーしとると
後でわかることはあるんよ
その時は操作出来んけえど
 
夢中の当事者と第三者
裏表におるようなもんじゃ
疑り深うなるんがおえんわ
相手にも自分の本音にもな
 
そっちも多分そうじゃけえ
やっちもねえことしもって
我は忘れてねえことねえ?
後で話しちゃろう思よんで
 
表裏がどっちも前向くんは
よう考えたら矛盾すらあな
自分ばあじゃ埒明かんわな
もちいとでーか引っ張らにゃ
 
我に返るやこ言うけえど
どっちが我か迷うんじゃろ
目玉がどけえちーとんかよ
自分以外何ょー見よんかよ

毎度馬鹿馬鹿

おしどり夫婦の大先輩
こちとら20年選手でい
お手本となるいい機会
さあさ心して聴くがいい
 
胸の内で豪語しながら
当たり障りのねえ話だ
いやんなるな我ながら
お互い様の目のお仲間
 
俺のようになれとも
なるなとも言えないけど
不機嫌そうだろうけど
祝ってるつもりなんだよ
 
そりゃま敢えて言うなら
随分長く近くにいてさ
禁断のキの字もない俺が
情けないのも多少あるが
 
ああ、いやいやいや
そういうんじゃないんだ
男は馬鹿なもんだからさ
ついなんだあいつってさ
 
自分のことは棚に上げて
ひとの妻になんぞなって
あーあなんかつまんねえ
とか思っちまうんだよね
 
もし俺がいなかったら
一生の出合いもなかった
世話になった恩返しなら
道化の甲斐もあるかもな
 
先に言っとくけど
犬も食わねえ喧嘩するよ
札止め熊五郎の堪忍袋
俺とよりは長持ちしろよ

みこしを担ぐ

かばいたい気持ちは
わからないでもなかった
わかろうと努力はしたんだ
身内としてならなんとか
 
でもねえ ご愛顧に甘えて
日陰者じゃかわいそうだって
役割を無理くり与えて出して
なあなあで認めさせるのはね
 
トホホな身内を黙って養う
そういう局面は割とよくある
自分も転ぶことはあり得る
だから責めずにもいられる
 
でもねえ チームとしてなら
どうしたって無理は出るんだ
情の前に客観的信用だからさ
なめられてるのわかるからさ
 
基本ひとりでやっていると
そういうことには疎いのかも
神棚の熊手とおんなじでしょ
いいじゃない 形だけだよ
 
そこらのちっちゃな会社でも
ちゃんとやろうとしてんだよ
罪悪感を埋める人件費扱いも
真面目な給料が払ったんだよ
 
ほらみろ言わんこっちゃない
呆れて怒りたくなる気持ち
切ることに迷い続けた苦しみ
重ねてやさしくもなる気持ち
 
担いだままの片棒と説得力
伝わる言葉の意味も変わる
なくして言えることもある
初めて立ち止まるひともいる

鏡台と舞台

この曲では涙ぐんで
この曲ではうれしそうだね
この話では真面目な顔して
この話では笑い出すんだね
 
このパスは通らなかった
このカーブで打ち取った
この時間は空いてなかった
彼女の願いは叶ったそうだ
 
自分の都合だけで味わえる
ことってあんまりなさそう
相手があるから調子が狂う
相手がいるから元気も出る
 
攻守交代
自分だって受け手になり
相手を不意に戸惑わせたり
幸せにさせたりするがいい
 
窓に映る顔を見ながら
誰かのことを考えていたら
その誰かが見つめ返した
気のせいなんかじゃないさ
 
おとぎ話のお姫様も
何かにつけさらわれるだろ
勇者の出番を作らないと
冒険が始まらないからだよ
 
矢を片手につっ走る黒子
なんでこんな役なんだよ?
その矢が射止めないと
話が終わらないからだよ
 
いりもしない役を雇うほど
運命は暇じゃないはずだろ
それを観ている側のひとも
いなきゃ声が出ないんだよ