Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

お相伴

 

「ただいま、具合どうなの?」
「ありがとさん、だいぶいいよ」
「頼まれたの、買って来たけど…」
 
蛙の根付のがまぐちを母に返し
吸いのみの水を入れ替え一息
 
「何時までいられるんだい」
「八時のバスに乗るつもり」
「じゃ、全部細かく刻んじまおう」
「えっ、僕?これ全部?」
 
僕は普段全く料理をしなくて
豚バラをまな板にぺとんと載せ
…野菜が先の方がいいんだっけ
 
ご飯は冷凍庫の中のをチン
お醤油は冷蔵庫の下の段
男子厨房に入れずの母なのに
楽しげに指示を出して時々咳
 
卵が上手く割れなくて殻取り
汗を袖で拭いネギとニラの香り
覗きこむ黒い中華鍋の底
ガス台に映る漠然とした顔
 
ペットボトルのお茶と焼き飯
上出来上出来と機嫌よく食し
お前も食べな、冷めないうちに
ちゃんと食べてるのかい?
 
アタフタと洗い物をして走り
間に合ったバスの窓に光
 
お粥の作り方が先だろうに
瞼にしみる母の目尻