Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

拾う神

 

会社帰りに立ち寄る場所は
雑貨屋電器屋古本屋
今日は十時を過ぎたから
近場で間に合う古本屋
 
別にこれといって
探しているものなどなくて
レジ横のご奉仕棚の前から
狭い通路のセザンヌ三島赤塚
 
平日の夜中に
連れだって来る客は少ない
それぞれの横顔と無言
本の匂いの中にぽつん
 
遠目に見ても顔が赤くて
手は口元で握り小刻みに震え
笑いをこらえるボタンダウン氏
なんの本かは角度で見えない
 
いいなあ
開いて一頁では笑えないものだ
徐々に結ばれる文字の羅列
謎の力学でかっ飛ぶボール
 
私はただむしゃくしゃ縫い歩き
意味を捉え忘れた目で右左
 
蛍の光で氏はぼうっと宙を見て
困ったように見返しを見つめ
一旦棚に戻そうとして入れ損ね
観念したように本を持ってこちらへ
 
私は改めてまごつき
浅葱色のアンソロジーを手に
財布のポイントカードを探り
そそくさ出て立駐で仰ぐ星