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Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

人肌と理想

あなたに言うときっと怒るから 言えなかったと彼女は泣いた あなたは正しいことが好きだから あなたの理想はいつも高いから あのひとはね、あたしのダメさを そのまんまで抱いててくれるの あなたはいつもこう思ってんのよ "俺がいいように言ってやってるだ…

迷子と道案内

振り返ったそのちっちゃい子は 泣いていたらしかった まずい時に声をかけちまったな ひと違いだと誤魔化すか迷った なあに? っと…今大丈夫?訊いてもいい? 誘拐犯と間違われないように 努めて聞こえよがしにハキハキ うん、いいよ 迷子になっちゃったんだ…

ふつつか夜話

ダメな子だった話を持ち寄り 焚き火のそばで順番に語り いつもなら茶化す面々なのに 不思議としんみり優しい心地 あたし自分の名前が書けなくて 形が似てるから、ちとさって いっつも反対に書いちゃうのね そういや靴も逆に履いてたっけ 僕は好ききらいが多…

出納と帳消し

前年から学校に来ない生徒がいて 新米教師だった母は校長に頼まれ キーコキーコと自転車に乗って 様子を見に行く暮れ方の街の外れ メモを見ながら右左右で路地の裏 変にかしいで見えるバラックが 立ち並ぶ中にその子の家はあった スカートをはたいてノックす…

半可通の点取り

でも話せば分かるかも知れない 聞いてやしないからわからない 頑なに拒んで聞く耳を持たない こいつは厄介すっとこどっこい 面子だか発言権だかハッタリだか ナメられちゃいけない事情が あるらしく眉しかめ腕組みのまま しらけて言う やっぱ駄目だなあ 君は…

元気は元の気

清く正しく美しく やり過ぎないほどほどの感情 健全で心やさしく明朗快活 根に持たなくて爽やか真っ当 生まれつきのひとも稀にいて 努力でそうなるひともいるね 努力でそうなったひとって そう出来ないひとを叱るよね 努力で自分を制御できるひとは 元の浮き…

委任状の宛先

世の中がんばってるひとってのは もっとがんばれるんだ あるいは 君よりがんばらないやつの方が いい目見てるぜ 悔しくないのか どっちもどっちと苦笑いしながら がんばってるって言うんなら ちゃんとすればって思うけどさ どのみち僕とは違う人格だから つ…

望遠の幸せ

お二人が幸せだなあと思うのは どんな時か教えてくれませんか そうだなあ、妻の飯はうまいから 健康でいさせてもらえてるのかな どんな時に幸せを感じますか やっぱりね、子どもがいるから 成長をそばで見届けたいっていうか 産んでくれてありがとうとは思う…

実存の傀儡

糸を切るのはこっちの裁量さ 何が起きるかわからないんだ 優先順位だって変わるだろうさ 取り残されるのはお互い様 思い出をなくすのも悪くないと うそぶく雲 駄目でもともと 持たずに生まれたものだもの 知らずじまいと思えばいいよ こんなことになるのなら…

旭川さくらみち

雨予報が辛うじてそれて 背景は曇天、マスクの息切れ 平日にしては混む駐車場を抜け 桜吹雪を左右に割って歩く川辺 診察明けのモヤモヤした頭と 張られたロープ「芝生の保護」 世知辛いね しょうがないけど たんぽぽも桜も何食わぬ顔 風の対岸で年配の女性軍…

一対一症候群

ひとりでも多くのひとに まんべんなく言葉が届くように それを目指すべきだったのに 一度も本気で願えたことがない 教育実習で叱られてばかりいた 生徒から目をそらす窓の外は葉 あてた生徒ひとりだけと話すな 教員なんかになりたくなかった お望み通りの不…

ひとの目ひとの手

ひとの目を見て話せないことが 失礼になるとは教わらなかった 赤面症と同じで生来の性質だから 仕方がないと思って生きてきた 随分トウが立った大人になると 元々は同じような癖があっても 意識して我慢で治したひとも いるようだと不意に気付くもの それで…

生き残る欲

ガツガツしてもきらわれるし 変なままじゃ掴みどころがない 勝ち負け度外視お人好しの矜持 ふーん、じゃあ何もいらない? 何もいらない無欲なひとは 高みの見物で出てこないから それはそれで可愛げがないんだ 欲しがって地団駄踏まないかな お望み通りを突…

笑い話を生きる

普段通りにしてみせる方が しんどい時だってあるものだ 遺影を抱えて涙をこぼしながら 坊さんが払いのける蜂に笑った 人間だけは笑う 何故笑う? 先の先のことを心配して苦しむ もう手に負えない想像力の代償 無心に生きられない その付録 いつまでもしょん…

神崎緑地の散歩

背後からのんびりした声がする ああ梅のええ匂いがしょうる 立ち止まると押されて進む車椅子 花粉症の私はマスクをずらしてみる 桃の節句の桃の産地 桃の花にはまだ早い 旭川百間川吉井川を渡り 迷子寸前狭い道 看板辿り梅まつり ゴフクシダレ ギョッコウシ…

いうだけさん

口ばっかりじゃねえ…、の声を うつらうつらに聴く洗面器の水面 うまく動く体で、いつでも着々と せわしなく何かをこなすひとびと そう、ひとのことはひとのこと それぞれ入れない部屋はあるもの 自分の出来ないことを出来るひと 自分の出来ることを出来ない…

懐かしい未来

傷ついたままの人間ってのは 笑いながら話してしまうんだ しょんぼりしょげたままじゃ やられちゃいそうだからさ 傷があるからいいですよね 褒めるつもりで言われたって 金継ぎの器を撫で回すようで ぞっとしないこともあってね おとなになって振り返れば あ…

疑心とナルシス

下駄箱を開けたら目に入る水色 ちょうちょ結びは金と焦げ茶色 ひょっとしてこれがうわさの…? あたりを見回し押しこむ給食袋 一時間目は全然聴いてなかった 誰だろう?誰からなんだ? あ、他のやつももらってんのかな でも違ったら怪しまれるよな 昼休みに給…

おむつの旗

長きにわたりお育て賜り 誠にありがとう存じますの三つ指 そう思うんかなの苦笑い 寒かったんよ 春まだ浅き日 憶えていない頃の自分のことは 母が折々に話した言葉で憶えた ほとんど寝るばあしよんじゃから 最初はまだ目も見えよらんからな 毎日ちいとずつ大…

錆びたブレーカー

豪邸別荘ベントレーは普段使い 毎晩料亭フルコース満漢全席 家庭円満子は優秀糟糠の妻一筋 友多く実直健康仕事はピカイチ まあ、大抵そうはいかないよな 全部のカードは揃いやしないさ どれかひとつに入れ込んでりゃ 別のどこかはお留守になるんだ あれこれ…

海路の日和

穏やかな瀬戸内海を渡る快速電車が 久々に風で立ち往生、折からの寒波 早々に運休アナウンスの出た翌朝 珍しくオタオタせずにご飯を食べた あるいはそんなこともあろうかと こちとら調べてあんだ次善の策を フェリーはどうやら大丈夫らしいぞ 代替輸送が船っ…

ものさしと身の丈

高学歴とかおっぱいでかいとか 稼ぎがいいとか背が高いとか 顔がいいとか心がやさしいとか ひとのものさしはいろいろだ こう言うと身も蓋もないけれど 与しやすいから声をかける面も なくはないんだ それが人の世 お高いひとに道は尋ねにくいよ なんだったら…

今生の出会い

少々近付いても別に変わらないよ まあ言っちゃえばそうだけど 離れたままでつべこべ言うのと 目の前にいるのとは違うんだよ 絶対会うわけがないと決めて 思いつく限りの悪態をついて 会社の同僚の顔色は気になって びくついてることもあるよね 綺麗事と笑わ…

福笑いと素顔

おめでとうと浮かれる気持ちには なれない年もなかないんだそりゃ さりとて欠礼には及ばないから めかしてやがるなんて茶化すんだ テーブルの上には空のどんぶり つけっぱなしのテレビから出囃子 そこいらで寝て喉がいがらっぽい 飲み残しのぬるい水を流し込…

気遣い御無用

参った参った、なっげえ会議でさ 仕切る係長もヤモメでいやがるから 帰りなんかてんで気にしてねえしさ 飲み屋まで引っ張りかねんなありゃ 何か食べて来たの? 夕方に弁当出たけど腹減ったよ じゃあシチューはあっためる、と フライパンでチキン表面焼いてみ…

あしあとの化石

いちいちなってねえって言うけどさ それって結局父さんが基準じゃんか 父さんの頭ン中に青写真があってさ それとズレてるから怒ってやがんだ 俺は俺なりに目一杯やってんだし 今は無理でもいつかは出来るように 少々しくじったって出直すつもり 老い先短えジ…

そばにいる孤独

ここにいない誰かさんのことを ちっとも思い出さないで過ごせると ひとりぼっちでも案外怖くないかも だって今がさみしいと気付かないもの 家族全員揃って食卓を囲んだって 渋滞を抜けて会議に間に合ったって いつの間にか孤独をしょって涙目 それは何かが足…

花と根っこ

ありふれていないものの方が 即効性はあるんだと思うんだ ハリボテの嘘やハッタリの方が 怪しく心を掻き立てもするんだ 現実離れした世界で塗り固め 凝った設定資料をこしらえて 夜更けに帰ったアパートで やってらんないと飲んだくれ 身から切り出されたヘ…

泣きどころに防具

あるひとは水分制限の必要があり あるひとは酒をやめねばならない 紅茶好きの前者は苦手のコーヒー少し 元は酒飲みの後者は割増しでコーヒー あるひとは規則正しく寝起きする あるひとは不眠と過眠を繰り返す 前者はそれをうまくコントロール 後者も週でなら…

スイッチバック

柿でもむこうか? おっ、柿あんだ うん、夕方ご近所に頂いたから そりゃいいな、頼むわ ノートパソコンを軽くたたむ 伸びをしながら手元を眺める ぺらぺらのまな板と果物ナイフ 四つ割りにしてから皮をむく へー、そうやってむくの んーよくわかんないんだけ…

モザイクとピー

思った通りのことを言っていい そういう立場のひとばかりじゃない ある部分はいつも唇噛んで曖昧 うまく言い逃れが出来るように 単なるエゴか周りの安泰のためか そりゃあわかんないなどっちだか 波風立てない気遣いだって自分が 転ばぬ先の杖かもしれないし…

およろこび

ささくれ財布をひっくり返して 背中を丸めて小銭を数え上げ 今月あんまりシフト入れなくて 仕事も急になくなったりしたんで 何がいいかなあ 季節のものがいい気がするな 甘栗がお好きなんだそうだから 栗拾いにでも行こうかな どうにか行けそうな農園がふた…

限りある永遠

縁起でもねえな…としかめた顔を 横目で見ながら肩をすくめると だってみんないつかは死ぬんだよ だからひとの無事を祈れるんでしょ お前、ねじくれた性格してんなあ やたら長生きしたがるやつってさ 死ぬだなんだよりこう、前向きな… なんで?死ぬってそんな…

カニ歩きの母娘

カニ カニ カニ カニ …カニが何? カニみたいに横歩き… 両手でチョキ、そのまま寝息 寝言かよ、と独り言 いつもくっきりはっきりの母の寝言 書くことないかもと思っていたけど 何やかやあるな 瑣末なことだけど その母のいぬ間に片付けをする ボロボロの皮の…

まどろむ岡惚れ

おかえりなさい、…何かあったの? ただいま。僕まだ何も言ってないけど なんだかそんな顔してるからよ うん…余計なこと言っちゃったかも かくかくしかじか、絞られた話 それ別にうちのせいじゃないじゃない こっちは普段通りやってるだけなのに 通りすがりの…

お粥のあーん

ピピピ、ピピピ、ピピピ むせて37.4度で止まる体温計 まあ別にその、なんてこたぁない 大仰な心配もそれはまたそれで厄介 ドラマなんかではさ、お盆に載った ちっちゃい土鍋のお粥が出てくんだ 少しは食べなきゃ駄目なんつってさ 美人のかみさんがフーフーし…

もたれる齟齬

我慢強くてすごい? 仕事だからに決まってるじゃない お金もらうのが汚いとでも言うつもり? アンタみたいな風来坊のがずるくない? 確かに僕は君が言うような人間だよ 何いきなり怒ってんの 僕は君を褒めたつもりだったんだけど だいいち君に金を借りた憶え…

来し方の闇

…彼は激戦区から復員し… さらりと読んで流してきた設定 実はそれこそがキモかもしれない 不意に遠くの景色にピントが合い 破滅的で怠惰で虚無で不道徳で 実にどうしようもないやつだね 僕はこんな生き方はしないんで さて、本当にそうだろうかね 殺し殺され…

幸か不幸か

幸せそうに見られることと 幸せとは意外と関係ないんだよ 言い訳したくなるだろうけど そんなのはどうだっていいこと そのひとが実際幸せかどうかに 興味のあるひともそうはいない まともにそれを考えている場合 そのひとは君を好きなだけだし だからねえ 疑…

ごめんください

帰りかけたら奥の方で電気が点いて はあい、いらっしゃいませえ あっ…よろしい、んですかね? どうぞどうぞ、お二人様ですね 腰が曲がってよっこらよっこら 卓上のおしながきは黄八丈の格子柄 節くれだったちっちゃい手でお茶 分厚い湯のみ あ、見て見て、茶…

言葉のスポイト

言わんだけでなんかかんかあるわ ってのが僕の母の口癖なんだ 言わないだけでなにやかやあるんだ 僕はそれが当たり前と思って育った 結構意地悪なところもあるんだよね ひとの話の裏っかわばっかり見て つい気になるのは言ってない心根 勝手に訳知り顔しちゃ…

fanのfun

だって楽しまなきゃなんにもなんない あたしは楽しむために来てるんだし そのために一張羅アイロン早寝早起き はたいてんのよ夏休みのバイト代 楽しませろなんて言わないわよ なんていうの、あたし思うんだけど テコでも楽しまないひとはまあ無理よ 自分から…

赤い赤外線

遅かったわね、どこ行ってたの それがさ、先輩に会う予定だったんだけど なんか都合悪いとかでそれはやめたの …どこに行ってたかを訊いてるんだけど あ、そっかそっか、そうだよね 時間あるし参考書買おうと思って、本屋で したら探してるやつがなっかなかな…

盆と正月

目玉の端っこに銘々皿の上用饅頭 麦茶の氷に穴っぽこ 器は汗をかく 腰を浮かせ位牌を見つめしくじる戒名 坊主は袈裟着て神妙な面構えの説教 誰が帰ってくるってのかねえ? まるで正月みたく妙にいそいそして あっちこっちで花火なんぞ打ち上げて なんだか随…

よろしゅうおあがり

元々ホテルでシェフをやってまして なんだかんだあって拾ってもらって 他に取り柄もないもんですからね ま、どうにかやってるんですここで コックスーツに山高帽 ちょっと不似合いな惣菜屋の店頭 両手に抱えた大皿から湯気が上がる 浮かない顔に母は相槌を打…

キャベツと鱗粉

あおむしを捕まえて 緑色のフタ付きの飼育ケースで 飽きもせず眺めていた夕暮れ かわいいよねえ まあねえ… キャベツの一番外側の葉 熱心に世話をしていたら ある時を境に動きが鈍くなった しんじゃうのかな んー、どうかなあ 学校から帰ったらちょっと違う色…

終わって始まる夏

あちいあちいあっちい あちいから無駄に走ったりしねえし めんどくせえことはとにかく後回し ばっかみてえに宿題多い夏休み 辛うじて営業中の近所の駄菓子屋 最近は週刊誌も我慢で単行本待ちだ 霜だらけの古いアイスボックスから 日焼けした手で掴み出すダブ…

母のお芝居

二昔前あたりまでは今のように 当たり前ではなかった本人告知 ばあちゃんは怖がりだから言わない 母はそう決めて祖母を誤魔化すことに 胃癌の末期、もって半年と言われ 母はごくりと飲み込みそっけない顔で なんかね、胃潰瘍かなんかだって 一応手術はするっ…

ようこそぼくらの人生へ

今日はうちに犬がやって来る日だ 一年前から何度もお願いしてきた 最初はあんまり相手にされなかった まあよく考えろ、お前飽きっぽいからな 父さんも母さんもマジメで困っちゃうよ 犬だってお前と一緒、同じ命なんだぞ 生半可な気持ちなら絶対飼わないわよ …

正義と孤立の味方

ネギが飛び出たエコバッグ 商店街をせかせかどかどか歩く やっぱりカヌレを買って帰ろう 店の軒端で揺れている笹の葉と 色とりどりの願いごと 叶おうと叶うまいと毎年のこと アーケードの切れ目で信号待ち きいろみどりみずいろあかだいだい てんでに大人の…