Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

パンドラの卵

不特定多数のひとりなのか
ちっとは特別なところもあるか
よき理解者に見えてるといいな
欲を言えば…欲を言えば?
 
蜘蛛の巣の張った重い蓋を
一瞬開けて慌てて閉じると
ああバカだったなあ俺も
若い時にウジウジしてんなよ
 
その気になりさえすれば
どうにかなったようなことが
カッコつけてる間に消えた
遠吠え 本気じゃないからさ
 
言うよ 始まってもいないのに
いきなり本気になるのは勘違い
そんなことも知らないのかい
真面目ねを皮肉で包む優等生
 
自分で勝手にとことん沸騰して
いきなりぶっかけ払いのけられ
つれないなあ 見損なったって
セニョール そりゃないぜ
 
ほんのりあったかくらいの
段階なら一歩目は友達なのかも
親友にお友達でいましょうよ
それとはアミダの先が違うだろ
 
完全に疲れ果て冷えきってから
まだやってる?ってコンビニか
何を約束してたって終わるんだ
今度はゆっくりあっためるんだ
 
楽しそうだな俺、聴いてんのか
昨日はふてくされてた癖にさ
笑いながらつらいなってなんだ
踏んづけて割るなよ いいな

かぐやの解像度

一分一秒でも長く一緒にって
昔はいろいろ苦心したもので
集金ついでに出張を見送って
改札を背に俯く涙を抱いて
 
言われた門限は守ったけど
残業じゃない日もあったよ
ウソが上手になったいい子
親はそれでも時折イヤな顔
 
織姫と彦星は年に一度か
そんなの考えらんないよな
付き合ってるつもりなんだ
もう他を探せばいいのにな
 
永遠みたいに睦み合う二人も
今は逢うこともないけれど
別に変わったわけじゃないよ
言うなれば月の裏側のこと
 
見た目も好みだしここも合う
だから運命のひとだと思う
ご都合と妥協と欲望の盲目
星の瞳に引き込まれる唇
 
お互い裏は見せないものさ
見えないから信じられたのさ
見慣れた魅力がかすんだら
地軸が狂って向きも変わんだ
 
あれ、こんなひとだったっけ
え、そこでそっちを選ぶって
いけ好かねえ 愚痴が増え
変わっちまったと溜息ついて
 
変わったように見えるのは
変わらない裏側が見えたから
今度は惜しまず見せてやるさ
目をそらさずにいられるか?

遠雷とポスト

明け方 鳴り止まない雷と雨
また川が溢れるのかしらね
書く手を止め、耳をすまして
うちのひとを起こすか迷って
 
最近目がよく見えなくて
読める字で書けてるかしらね
万年筆のインク切れてたりして
いくらになったのかしら切手
 
うちのひとに見てもらえば
いいことくらいわかってるわ
でもなんだか読まれるのはイヤ
いい歳してって呆れそうだから
 
送られる相手のひとにしたって
そうなのかもしれないわね
言いっこないわ、迷惑だなんて
私だってお客さんだものねえ
 
贅沢だってわかってるのよ
ひとりでは何も出来ない私を
黙って支えてくれるうちのひと
たまに電話をくれるうちの子
 
でもたまにさみしくなるのよ
家族って飽きが来ないけど
いやなところも似てくるでしょ
しがらみのない相手に憧れるの
 
有名なあなたにとっては
私は知らないおばちゃんだから
どうにもなりっこないんだわ
それくらい知ってるんだから
 
ねえ、すぐ本局に出して来てよ
急ぎか?やんでからでいいだろ
湯冷めする封筒 そうだけど…
書かなきゃよかった気もするの

しろやぎのおてがみ

あれ、バグまだ来てないの?
急な用事が入ったんでしょ?
さっき何も言ってなかったぞ
私には連絡ありましたけど…
 
…あいつ、やりやがったな
顔をこしらえて席に着いた
日を改めた方がよかったかな
いえ別に、どうしてですか?
 
なんか、ほら、二人なんて
君もイヤじゃないかと思って
それなら先に断ってますって
あ、これです今日のオススメ
 
実は俺が気まずいんだよなぁ
バグのやつ、散々吹き込むから
あいつの言い分がホントなら
俺この子に何話しゃいいんだか
 
その後彼女とはいかがですか
…いきなりそこから訊くか?
何もねえよ、フラレたんだから
……諦めちゃうんですか?
 
あー、もういいよその話
君が言うのおかしいだろ大体
そうですか?私の後輩ですし…
そういう意味じゃない
 
だって…どういう意味ですか
君があんなこと言うからだろが
怪訝そうな目が中空で泳いだ
酔ってたしな…憶えてねえのか
 
サザエ壺焼きから目を上げたら
向かいはせっせと鯛のあら
…こいつなんか腹立ってきたな
勝手に忘れてんじゃねえバカ

続・一生のお願い

死んでも食わねえ飯なんか
死んだら食べらんないわそりゃ
それに食べなきゃ死ぬんだから
いいよ いやなら食べなさんな
 
ダンダンダンと踏み鳴らす階段
部屋のドア ンガチャ バーン
あーあ 明日持久走あんじゃん
買い置きのフタを切ったみりん
 
めんどくさい年頃になったわね
私の時もあんなんだったっけ
いやー、男子ってまた違うって
腕力じゃもう敵わないもんねえ
 
ホントに食べないつもりかしら
お父さんとお兄ちゃん、は…
今日何時に帰るかわかんないか
生姜焼きどうしようかなあ
 
作って欲しくなくてもいいけど
そんなら自分が作ればいいのよ
お母さんだって人間なのよ
そりゃおなかだって空くわよ
 
イヤホンで道ならぬ歌を聴いて
豚肉は袋でタレに漬け冷蔵庫へ
古い冷凍チャーハンをチンして
お風呂のついでに掃除して寝て
 
どんな顔して起きてくるかな
お父さん達は知らないからなあ
卵の目玉がちょっと寄ったら
不機嫌そうな目も横を向いた
 
おはようだけで放っておいたら
食っちまうぞ 食わねえのか
お兄ちゃんがお皿を持ち上げた
私は聴かなかったことにした

投影物の指向性

感じたこともないような
感じたくもなかったような
不気味さや恐怖や不愉快や
不安や拒絶反応やうそ寒さ
 
人生の時間やなけなしのお金
勝手だよ でもよりによって
遊びとしても気がしれないね
そういうのはもういいよ俺
 
歳食って守りに入っただの
昔はマッドにとがってただの
知ったこっちゃないよ
明日死ぬかもしれないだろ
 
そりゃまあ確かに俺だって
ひとがやらないことを探して
ひとを食った変化球を投げて
悦に入ったりもしたけどね
 
今はとにかく出し惜しみせず
この世のひとの味方になる
なんなら担いであの世に行く
見合うものにしたいと思う
 
現実ってそんなもんじゃない
それは俺もわかってるし
わかってるから必要としない
夢も希望もない不機嫌な作り話
 
何度受け取り損ねたとしても
やさしさはきっとあったんだよ
俺はそれを見せたいだけかも
人間も案外悪くはなかったと
 
いつでも同じことを伝えたい
この世は捨てたもんじゃない
どこから登ったって構わない
てっぺんでよかれと思いたい

しゃーねかろう

えろうぼっこうしゃーねかろう
こうなるともはや呪文か念仏
電話の向こうに話しかける
彼女の声はいつもより弾む
 
うん、うん、ほんならなー…
…ごめんごめん、長かった?
同じひとじゃないみたいだ
悔しいからひとつ訊いてみた
 
なんだっけ、あの、さっきのさ
エロ、ボッコ、シャア…?
え?私そんなこと言ってた?
シャアネカロウ?あれなんだ?
 
シャー?…あ、わかった
えっとね、なんていうのかな
しーんぱーいないさー♪かな?
なに?どこをどう訳してんだ?
 
えろう、が、とてもとかすごくで
ぼっこう、も、まあ似た意味で
しゃーねかろう、が心配ない、ね
はあー…ひとっこともわかんねえ
 
しゃあないやろ、ってあるだろ
あれとしゃーねえって違うの?
多分、世話はない、なのよ元々
世話ぁねえや、って言うでしょ
 
あー、それはなんかわかる
仕方がない、はなんつってる?
うーん、特にはない気がする
どねんかなろう、ってなっちゃう
 
どねん…ってのは何だよ?
どうにかなるでしょ、ってことよ
いらまかすばぁしておんびんくそ
なんかわかんねえけど悪口だろ