Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

よいお年を更新

そう言えば去年の今頃は
ひどい大喧嘩になったんだ
十代の頃 四十路はみんな
おとなになるんだと思ってた
 
こんなにささくれてる時に
年に一度のひともいる賀状に
この手で何か書くなんて怖い
ふて寝する ああ時間がない
 
今年は今年で
スケジュールは大差なくて
なんだかんだ時間がなくて
でものんきに母の話し相手
 
喧嘩したのは同じ母だけど
少しはコツを掴んだのかも
ここで私が怒りに任せると
自分がいちばん困るんだよ
 
「頭の上のハエも追えずに」
うっかり口に出した不用意
いやそういう意味じゃない
言い訳の山 あとの祭り
 
なんつったらいいのかな
見つかるまで探すことだ
すぐにわからないときは
無理に言わないことさ
 
どう取られるか悩みながら
笑って欲しいと願いながら
話すのはむずかしいんだな
なんにもわかってなかった
 
言いたいこと言える相手が
おるかおらんかで違うな
そう言って今年の母は寝た
続き続き 起きろプリンタ

堪忍袋を担ぐ

とうちゃんはかってだよ
そんなにいいカッコしたいの?
かあちゃんがまたなくだろ
そんなんだったらもういいよ
 
真っ赤になって見上げ地団駄
こっちだって酔っているから
トボけたフリで半笑いしたら
ドアをバーンと閉めていった
 
ガキの癖に生意気言いやがる
嘘でも親は立てるもんだろう
ったく何教えてやがんだ学校
脇腹をかきつつ冷蔵庫を漁る
 
乾いてヒビが入ったチーズを
おもしろくもなくかじると
壁のカレンダーに合うピント
ああ、いけね…忘れてたよ
 
あいつが怒ってたのは
多分それじゃないだろうな
でも一事が万事こうなんだ
やっぱり俺が勝手なのか
 
抜き足差し足こども部屋
音を立てずそうっと開けた
だんだん目が慣れてきたら
床に捨ててあるでかい靴下
 
参ったな 気付いたのかね
大きくなってたんだなお前
眉間に苦しげな皺を寄せて
疲れる夢を見ていそうで
 
どんな願いでも叶えると
生まれた時は思ったんだよ
俺がサンタに頼みたいよ
どうかもっとマシな父親

ノックの表裏

解決しなくてよかったの?
一瞬ぐっ、と詰まりつつも
…うん、いいの
言いつつ思う ほんとかよ
 
話したら気が済んじゃって
聴いてくれてありがとね
もうこんな時間 寝るかね
気付けば自転車二人乗りで
 
解決しなくてよかったの?
その背は責めてやしないけど
与太話が目的地なわけないよ
一体どうしたかったんだろ
 
あちこちに落っこちていた
切れっ端を縫い合わせたら
あらすじが見えた気がした
涙で終わる このままじゃ
 
幸せなら影法師になるけど
そうじゃないなら出張るよ
元はふかふかだった毛布を
切り裂いたのは何だったの
 
そういう気じゃないのかな
どっちも探ってばっかでさ
舵を切った方が答えなんだ
もうしょうがないじゃんか
 
二人乗りなんて違反だって
そういやそうなんだけどね
カーブで重心を左に合わせ
派出所の前でパッと降りて
 
乗るかって訊いてくれたなら
これくらい造作もないんだ
そこまでしたくないんなら
帰り道は自分で探すがいいさ

夢色の白旗

うとうとと眠りに落ちる
あと五分と唱えまどろむ
眠りの外より遠いうつつ
絵筆の色が水面に広がる
 
これよりいい夢は見ないし
これより麗しい現実もない
うすうすわかっているのに
起きなきゃいけないらしい
 
いっそがっかりしないかな
何もかも幻想だったなら
静電気がぱちんと来たら
乾いた現実に目覚めるんだ
 
捨て鉢と冷えてきた眉間と
溜息と徐々に狭まる視野と
猫背に見えるだろうけど
いるだけで目一杯だよ
 
三分前の秒針が進む左手
ぎりぎりに背筋を伸ばして
ちゃんとしたひとに化けて
ままよ、どうにでもなれ
 
深々とお辞儀
つられてお辞儀
くらくらして血の気が引き
顔を上げたらはじまり
 
あれ恐れていたのと違うな
思っていたのと違わないな
威圧だとか幻滅だとか
何もない そのまんまだな
 
ポカンとしてあっという間
拍手をしてお辞儀をしたら
耳にぼうっと血が灯った
やっぱりそうか 困ったな

観音開きの蓋

勝手に願うことはあるけれど
全然違ってたって別に平気よ
トホホだけど慣れっこなの
裏目に出るのはよくあること
 
勘違いを勘違いと知るのは
それを確かめようとしたから
ぎゅっと目を閉じていれば
影ひとつない夢は箱の中
 
これとおんなじ終電で
パンパンに腫れた足で
泣いて帰ったこともあって
こんなに暗いんだなあ窓って
 
何度も同じ手を食わぬよう
きっと楽しんでみせましょう
気の置けない友にも会える
次の日だって豪華にしてある
 
したたかになったのかな
ポカもやるかもしれないわ
話の種だしなんとかなるか
それをあなたに教わった
 
何もかも楽しいベタな日は
思い出せないからいいのさ
ところどころ落ち込む日は
後で笑えるからいいのさ
 
あるものは探さなくていい
ないものも探さなくていい
なくしたら次を探しなさい
先は長いし短いし 昔は昔
 
蓋を開けたら体育座りで
膝で涙を拭き口をとがらせ
まだ平気なフリをするのね
気をつけて行っておいで

転ばぬ先転んだ後

そんな馬鹿馬鹿しいことに
振り回されるのはよすがいい
道理だって通ってやしない
まずは自分を守るのが常識
 
友達からのよかれの警告
神妙に頷いてから首を傾げる
心配してくれてありがとう
でも好きでやってんだ、僕
 
そういうのさあ、洗脳だぜ?
今はよくても絶対後悔するね
つらくても騙されたと思って
一旦やめてみた方がいいって
 
悪く思わないで欲しいんだ
どっちみち騙されるんなら
自分で決めた方がいいから
師匠と弟子みたいなものかな
 
どういう意味?
傍から見たら理不尽だったり
非効率的だったりもするし
そこに理解は求めないって話
 
そんな例外が基準になるかよ
お前は修行自体なめすぎなの
続かねえやつの方が多いだろ
やめてよくなる場合もあるよ
 
助けられた恩義もあるから…
たくカッコつけてやがんなあ
面倒くせえからに決まってら
そこまで思われてんのか?
 
沈む船なら僕も一緒に沈むよ
死ぬならそっちに憧れるもの
お前今年でいくつになんだよ
俺にはわからん 勝手にしろ

ネトリール

驚かないで欲しいんだけど
ほんとうはそうなんだよ
君の理想像とは違うんだろ
がっかりさせてごめんよ
 
一瞬硬い表情をして
白いおでこをうつむかせ
ふうと息をつき空を見上げ
やっぱりそうだったのね
 
軽蔑してくれてもいいんだ
ほんとうのことを言えば
全部台無しにする気がした
騙した方が得だとも思った
 
みっともないリアルなんて
誰も求めてないだろうしね
ひとのためだとも思ってて
ヒロイズムもあったはずで
 
ひとのためにがなかったら
多分だけどそんなに長い間
辛抱してなかったと思うわ
理不尽なの苦手そうだから
 
わかるわけじゃないけど
つらくないんならいいのよ
演技が生きがいならいいの
その生き方もあると思うよ
 
そうだなあ、どうだろうな
君に今こぼしたってことは
つらくなってきてたのかな
自尊心…は大げさだけどさ
 
でもうれしいな、ありがと
え、何のこと?
軽蔑するわけないでしょ
私にして欲しかったの