Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

四次元の内訳

うたを聴いた時に
その登場人物を思い描き
知らない言葉は適当にぼやかし
五分かそこらの試写会
 
お互いに見せあっこ出来たなら
こんな風にイメージしてたんだ
あたし、駅の場面だと思ってた
待たされるやつ、こんな男前か?
 
つくったひとが半透明で現れ
ま、正解なんてないですけどね
つまりはマッチ棒とマッチ箱で
火が点けば始まる、それだけ
 
同じことを見聞きしながら
あさってのことを描きながら
黙って手をつないで歩いた
泣くのわかるなぁ、と俯いた
 
確かめようがないからこそ
そのあわいで重ね合う色を
他の誰にも知られたくないよ
君にだけ伝わるといいけど
 
そう、あたしもそれ思った
んー、あたしは違うかな
どっちでも身を乗り出すんだ
君が見た景色はどうだった?
 
言葉ってカッコつけ病だし
言うほど離れてもどかしい
カードめくりは暇つぶし?
誰でもよければよかったのに
 
見つめ合った沈黙の後は
同じ方向を見るといいそうだ
同じものを映して生きるんだ
見落とした色は僕の瞳の中

悩みごとの表層

知り合いが悩んでいて
それはこれこれこんなことで
私どうしたらいいでしょうって
それはおせっかいの丸投げ
 
勉強できないモテない仕事ない
世はありふれた悩みでいっぱい
誰だって日々あれこれ忙しい
正直言って構っちゃいられない
 
それでもそれが本人の悩みなら
自分がお役かどうか知らないが
相談相手に選ばれて光栄だから
考えて自分で答えを探すんだ
 
家族も親友も誰より本人も
知らないひとよりは考えてるよ
代わりに試験受けてくれるの?
あなたが恋人になるっての?
 
自力で考え続けられないことは
ほんとうはどうでもいいことだ
それがいけないんじゃないんだ
親身なフリはバレるってだけさ
 
どうでもよさそうな軽い調子で
遊び半分みたく冗談交じりで
半笑いを浮かべた相談だって
胸の内が余裕とは限らなくてね
 
暇つぶしの場合も勿論ある
後がないSOSの場合だってある
疑って決めつけたら全部終わる
どのみち何も出来ないだろう?
 
僕は落ちこぼれでダメなんです
つらい話ほどおちゃらけられる
私の良心が痛んで困るんです
そっちは見られて困らない王道

つまらぬものでは

何だったらよろこぶのかな
あんまり安っぽいのもな
でも高すぎても気兼ねだよな
他とかぶるのもダサいしな
 
何が好きだって言ったかな
何かきらいなものあったかな
邪魔にならない方がいいよな
でも印象は多少残したいかな
 
一緒に行けば間違いないけど
気持ちを手渡すってことよりも
ものだけ先走ってる気がするよ
僕じゃなくていいんじゃないの
 
でもヘンに驚かせようとして
失敗することも多いんだよね
ロウがついたのつかないのって
 
ロマンかはたまた実用か
控え目かそれとも押せ押せか
フレッシュか日持ち優先か
話題の店か老舗か隠れた名店か
 
気が利いてるって言われたら
まんざらでもないさそりゃ
悩んで迷ってたのがバレたら
ちょっとカッコ悪いかもな
 
おずおず差し出した包みを
目を丸くして見つめると
え、いいのに、そんなの…
それを言っておくれでないよ
 
一瞬靴を見てムッと黙ると
あなたがいてくれれば何も…
目を上げると眉を寄せ赤い顔
…嘘 なに?何が? う・そ!

汗水の受取人

さりげない新技術や
ちょっとした工夫が
なんのためだったか
見失うこともあるんだ
 
ここんとこ徹夜続きで
ろくなもん食べてなくて
レッドブルは四本目
アイディアを振り絞れ
 
朦朧としながらひたすら
走らせてちゃんと動くか
対応に追われてフラフラ
とにかく間に合わせるんだ
 
なんとか納期に間に合う
出荷してやっと家に帰る
風呂で船を漕ぎ頭をぶつける
眠る眠る眠る
 
やってられないよ
口では言うけどやめらんないよ
ほんとはもっと楽したいけど
いい歳だし不安もあるけど
 
あくせくつくったものに
何も言われないことの方が多い
文句があるひとの声は大きい
柄にもなくしょげて歩く帰り道
 
僕を見てだしぬけに背を向けた
ちっちゃな女の子 笑う母親
お礼言いたいって言わなかった?
すみません、いつも夢中だから
 
あ、そうだよ、そうだった
ものをつくりたいんじゃなかった
人生の端っこを借りたかった
うれしいをそこにつくりたかった

ひとからげない

余計な特別扱いをするな
誰とも変わりゃしないんだ
ちっとは特別扱いしろよな
君たちとは違うんだから
 
どっちも心底ほんとうで
さすがにこれは無理だよね
まあこれくらいは出来るよね
どっちもなんだかムッと来て
 
でもその苛立ちってきっと
あらゆる心の中にあること
俺は俺だ一緒くたにすんなよ
レッテル貼ってんじゃねえよ
 
ひとまとめでうっちゃられて
中っ腹になったけれど黙って
わかりっこないんだよどうせ
そう思うならこっちもそうで
 
わからないことはわからない
だけど俺ならこうして欲しい
そう思うならそうすればいい
それで間違ったら直せばいい
 
さわらぬ神にたたりなし
でもみんな神なんかじゃない
もしかして人間と思ってない?
それともさみしい神々の遊び?
 
みんな違ったから生き延びた
何かで誰かをきらいになれば
まつわる全部がいやになるんだ
ひと括りにしたらそうなるんだ
 
切り離せ ちゃんと切り離せ
そうしてもう一度全部を許せ
ひとならばひとを見て変われ
新しい自分で古い自分を許せ

無遠慮なむき身

ひとを笑わせたり元気づけたり
励ますような役として生きたい
そう決めてあまり間もない旅先
不機嫌に黙りこむ目の前の友達
 
あの時は焦ったし参ったなあ
楽しい時は楽しくやってたから
なんとかなるとは思ったけどさ
怒らせるつもりはなかったんだ
 
旅行って大概そうなるんですよ
普段ならせいぜい半日でしょ
どんなひととでも長く一緒だと
何かヘンな我慢しちゃうのかも
 
文句ならその場で言えよって
思ったけど僕も言えてなくて
合わせてるのは僕の方だって
どっかで思ってたのかねえ
 
私も怒られたことありました
次にどこで降りて乗り換えるか
任せきりで着いて行ってたら
自分、ちょっとは考えや!
 
船頭多くして、じゃないけど
ちゃんと任せるのも大事だろ?
…って僕も思ってたんだけど
旗色が悪いよな喧嘩になると
 
そうなんですよ、それで私は
急に自力では行けないから
フテてだんまりになりました
でも話しかけて欲しかった
 
あいつもそうだったのかなあ
癪だったけど結局声かけてさ
まくしたてたら喉がカラカラ
目を上げると笑い出す背中

ヒマツブシモドキ

明け方にはリリリと虫が鳴く
そうか、元に戻ったんだろう
暑いとそれだけで頭が沸く
ありもしないのに惑わせる希望
 
ありがたいね
ただでも幸せなのに思われて
悪い気はしないよそりゃあね
気休めや励みになればそれで
 
お裾分けってのは
ことのついでだからさ
気兼ねがなくていいもんだ
張り合いくらいにはなるしな
 
あとはどうやってあの勘違いを
適当に散らしてそらすかだよ
楽しいことは他にもあるだろ
いろいろつらいのはわかるけど
 
ありがたいことよ
家族にも恵まれてるんだもの
そりゃまんざらでもないわよ
支えになれるって冥利だもの
 
お余りのやさしさだって
元があるから出るものだしね
恩着せがましくならなくて
身内にもいい顔出来るのよね
 
あとはどこまでもつかかなあ
あたし?いや向こうもどうだか
なんか逃避してるっぽいから
案外さみしいんじゃないかな
 
めいめいに聴こえないように
したり顔で言って笑い飛ばし
ひとりになると風呂場で泣き
どうせ必ず死ぬのに 嘘つき