Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

幽霊レプリカ

よく出来たアンドロイドが
ギロリとこちらをねめつけた
いかにも言いそうな台詞が
絶妙の間合いで再生された
 
そりゃあね 俺は確かに
化けて出てくれて構わない
望むところだと祈りもし
つまりは願ったり叶ったり
 
なのになんだろうなこの
おののきと妙な胸騒ぎと
はっとあふれた懐かしさの
冷えつつ固まるさみしさと
 
似ても似つかないよりは
似ててくれた方がいいさ
でも途切れたままの記憶には
ツギハギしたくないかもな
 
よみがえりでも夢でもなく
それっぽいことをしゃべる
発話データならたんとある
進化する音声認識システム
 
死んじまったのに忘れてさ
自分でも気付かないままでさ
抱かれてるのは確かに俺だが
抱いてる俺は誰だろうてんだ
 
こいつは違うよってのもねえ
無下には言いにくいもんだぜ
だってさ よかれと思って
走ってきたんだろここまで
 
余人をもって替えられたら
俺、いなくてよくないか?
ひとですらないってんなら
抱いてるこれはなんなんだ