Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

藁でできた鎖

初めてのハイキングコースを歩いていたら
急にお腹がグルグルと痛くなってきた
昨日晩呑みすぎたか、よくあるんだよな
こんな時に限って案内板も見当たらないや
 
前かがみになりながらせめてベンチを探す
なんていう樹だか知らないけどもっさりと緑
その前のベンチには若い女性のワンピース
よりによってこんな時に結構好みでかわいい
 
座るも訊くもある意味地獄かも
引き返すのも不自然な位置で覚悟を決めると
あのすみません、よろしいですかちょっと…
手帳から目を上げて、怪訝そうな顔
 
隣に座って収まるのを待つのはナシだな
このあたりに、休憩所かお手洗いってあります?
彼女は目を合わさず手を顔の前でひらひら
慌てて手帳をバッグにしまって立ち上がる
 
いや、あの、コンビニなんかでもいいんですが
俺なんかヘンなカッコとか言い方とかしてるかな
血の気が引いて語尾がかすれていく中
ワンピースはくるりと向きを変えて立ち去った
 
元々それほど女性に親切にされる方ではない
それでもあっけにとられついでにグルグルも忘れ
困惑の後にわいてくるやりどころない苛立ち
なに今の?俺がなんかしでかすと思ったわけ?
 
だいたいあれだ、多少目立ってかわいいとさ
ひとの身になるより自意識過剰なんだよな
自分だってピンチもあんだろ人間なんだから
いつか同じ目に遭って思い知るがいいさ
 
そのまま口をとがらせうつむいて歩いていたら
ウエストポーチのオバサンが声をかけてくる
一瞬考え、前例にならいすらっと無視をした
ポカンとした顔を尻目にやっと胸がすく