Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

運痴の特権

 

1000m持久走で1週間前から口が苦く
出来ればドリル5冊で勘弁してもらいたい
9秒台後半が出るのは50m走
リレーでひとを抜いたのは
前の3人が団子で転んだ時くらいだ

小学校の先生は
「縄跳びは得意なのね」と格助詞を選び
サッカーで前に蹴り返すつもりが
ボールは何故か自分の背後へ

バスケとバレーはこけつまろびつ
プールでは概ね10mで足をつき
飛び箱は真ん中に乗ればマシな方で
マットというマットからはもれなくはみだし
逆上がりは補助具があっても回らない

運動神経が自慢のクラスメイトは
「やる気出してがんばらなくちゃダメよ」
そんな顔でジロリ睨まれても困るのだ
たとえばそっちの国語の点が悪いのは
怠けてやる気がないからなのか

体育の時間はずっとずっとキライだ
出来ないと疎まれるところがキライだ
出来るとチヤホヤされるところもキライだ
結果が出ないとえらそうに叱られて
あーあと溜息

代わりにやれと言われたら
まっぴらごめんだから
ひとより出来る上にがんばっているひとを
のんきに見ているだけなのに息詰まり
たまに涙ぐむくらいが関の山

自分がどれひとつまともに出来ないから
どのスポーツの結果にもがっかり出来ない
大人になってもウンチはウンチのままだけど
期待をなすりつけず沈まず浮かず怒らず
割とやさしく観られる日が来るのだよと
あの頃に戻って教えてやりたい