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Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

出納と帳消し

前年から学校に来ない生徒がいて
新米教師だった母は校長に頼まれ
キーコキーコと自転車に乗って
様子を見に行く暮れ方の街の外れ
 
メモを見ながら右左右で路地の裏
変にかしいで見えるバラック
立ち並ぶ中にその子の家はあった
スカートをはたいてノックする扉
 
ああ、あんたが今年の担任かな
はいそうです…あの、今は?
ちょっと使いに出しとんじゃわ
そうなんですか
 
下の子が、ほれ、まだ小そうてな
なんせえもう、手が足りんでから
子どもじゃ言うたって、おったら
そりゃ猫ほどの役には立つけえな
 
毎晩ほっつき歩いて金も入れんと
うちのもアテにならんで困っとんよ
なあ先生、ええ給料取っとんでしょ
貸してもらえん?千円でええんよ
 
…あッたま来てから、と母は言う
母親に直接どう返事したかは言わず
金貸してくれ言われました、校長
学校に帰ってそう報告した、と言う
 
失礼だと思うんですけど、言うたら
さすがの校長もだまーっとったわ
何が金貸してくれで、担任に言うか?
ホンマ馬鹿にしとるわ
 
母の両親は騙されやすいお人好し
横取りされた家を建てる予定の土地
寄進なら灯籠が何本も立つらしい
よく出来た金勘定、子々孫々の収支