Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

喪失の記憶

 

憶えるんと忘れるんはどう違うんかな
いやな、関係ねえかもしれんのじゃけどな
何千年も昔っからひというもんは
死ぬいうたらどねえなことなんか
なんでひというのは生まれて死ぬんか
それを解りとうてお話作りょうたんか思うてな
 
若えひとの話みてえに思えらあな
例えばそうじゃな、ぼっこう歳ぅ取りゃ
わが息子見て「おたくどちらさんかな?」
そねえなこともまあ珍しゅうもねえわな
昔ゃそねんなるまで長生きせなんだ
せーでも、ありゃ闘いよんじゃ
 
神じゃ仏じゃいうんはよう解らんけえど
ひとは忘れにゃ生まれ変われんのじゃろ
来世の準備が出来とります言うて
ちいとずつこの世を忘れさそうとしょんで
ほんでも忘れとうねえのが人情じゃけえ
でーじゃったかなぁ、ばぁ考えよんで
 
心臓移植やこで、もろうた側が
くれたひとの記憶を持っとる言うたりな
ひとが必ず死ぬんはなんでな、いうて
時間いうのはなんじゃろうかいうて
いよいよテツガクの話じゃけえそりゃあ
そんなことばぁ悩みよるうちに死ぬんじゃ
 
憶えとってもやっちもねえことがおいいで
こうしゃあえかったようなことばぁ忘れて
浦島太郎じゃって延々いつまあでも
鯛やら平目やらファーと見とりゃええんよ
それのになんでかいのう言いだすんじゃ
…ありゃ、そろそろ帰らにゃおえんな
 
ほんならいのうか、忘れもんはねえな
ご馳走様 ありがとうございました
背後でパチンパチンと電気が消えた