Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

小市民の時間

 

五百四十円です
財布を覗く
五百円玉一枚 百円玉一枚
十円玉三枚 五円玉二枚
 
一瞬顔をしかめ指を引っ込めて
…じゃあ、六百円からで
はい、六百円お預かりします
財布の隅のめのうの豆蛙
 
五十円玉一枚 十円玉一枚
五円玉なんて貯めてる場合?
つまりは切羽詰まっていないから
必死にならずに済んでるんだな
 
みっともなく駆けずり回るより
賽銭箱に手を合わせて祈るふり
何かの手違い笠地蔵
伴侶を連れて米一俵
 
褒められるいわれもないけれど
悪いことなどしてはいないよ
自業自得の苦境を脱し
それがそんなに素晴らしい?
 
埋めずには生きられぬ欠落もなく
仕方なく使わずじまいのシャベル
切り開いたひともいるじゃないか?
軽はずみだって甲斐性だからさ
 
道を外れもう後のない崖っぷちに
自ら追い込まれる力を才能と呼び
そうならぬよう生きる用心深さは
意気地なしと嗤われて終わりだ
 
どこが偉い 何が偉い
乗り越える逆境の何が尊い
無意識に置き去られ続ける
善良な浮かばれない凡庸