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Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

四球

 

ゲホッグフッガホッゴホッ、ウエッ
残業終わり、駅までの道すがら
「ちょっとお、うつさないでよね」
顔をそむけるお局課長の声
「うちの子、中学受験なんだから」
 
夕方の会議から止まらない咳
ネクタイを緩め、ハンカチを口に当て
「子どもがいないと、気楽でいいわねえ」
ゴホゴホ、グゲッ……
「さっさと若手に席譲った方がいいって
わかってんのよ、アタシだって」
フェンスとネオンは涙目でぼんやり
「間口も広がるし、主人の稼ぎも、ねぇ。
やむにやまれずってものよアナタ」
やっと駅に着いて別々のホームへ
「おっ…おづかでさばでした…」
 
駅に近い以外取り柄もないコーポでは
妻がコタツに頬杖のこっくりから目覚め
「なんなのその咳、ゾッとするわね」
今日はすぐ寝る、風邪薬あったかな、
ハラは減った、軽くなんか食わせてくれ
ヒューヒュー喉で訴え、ゲンナリと妻は
「今日はあなたが買って帰るって…」
 
咳止めシロップ栄養ドリンクどてら
冷凍ご飯昆布茶梅干し生姜卵でおじや
「ねぎ切らしてんの。明日が特売で」
「味、なんか薄いな。醤油は?」
「鼻が詰まってるからでしょ、ホラ」
 
まだ間違えているひとがいる生ゴミの日
お隣さんの柔軟剤は今度もヘンな臭い
いつもの話を聞き流しながらトロン
 
女ってやつは毎日毎日よくしゃべるな
しかも聞きたい一言は見事によけやがる
子どもが代わりに言ったりするものかな
まあ、どっちでもいいや、今日はもう
 
鼻をかんで最後の力を振り絞って
願うは背中をさするうら若き美女の夢