Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

センミンの自覚

 

そりゃ私だってこんなこと
好きでやってるわけじゃありませんよ
 
親の金だか奨学金だか知らないけど
とにかくどの道ひとのお金でしょ
さぞやご立派な研究をなさるだろうが
私には知ったことじゃないんだから
 
タテマエは世のため人のため
のうのうとお高いご身分でいられて
言っちゃあなんだがいい気なものだ
将来があるだけでひとを裁けるとはな
 
いまいましげにポケットの手を突き出し
よれた帽子の中年男は走り去り
僕の手には昨日より840円少ない
月末までの僕の生活費の残り
 
僕は黙々とペダルを漕ぎながら
採点バイトの雑居ビルへの道すがら
嘘で小銭を巻き上げた中年男の手管
その居直った言いがかりを反芻した
 
今から東北に発つのにカバンをなくし
最寄りの親戚宅に立ち寄る電車代
それだけでもいいから貸して欲しい
必ずお返しするから連絡先をここに
 
翌日もぬけぬけと同じ辻に立って
物欲しげに人通りを眺める濁った目
問い詰めたらこうなったわけだけど
学生ってそんな妬ましい身分なの?
 
そりゃ下宿で仕送り受けてるけど
バイトだってしてるし毎月カツカツだよ
学部の勉強が人類に貢献するだとか
そんな大それたこと考えてないしさ
 
もっとあぶく銭持ってそうな成金から
ふんだくればいいのにケチなジジイだ
一時間分のバイト代がパーだ、たくもう
正義を振り下ろしてタイムカードを打つ