Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

表町二丁目

師走の百貨店のエレベーターガール
いらっしゃいませ、上へ参ります
年配の女性が頭を下げ坊主頭は杖をつく
ベビーカーを押した夫婦が後を追う
 
すみません、六階で
やれやれ、やっと寝たっぽいね
ね、さっきの曲なんてんだっけ?
毎年かかるよな、タイトル忘れちゃって
 
結局、あの彼女来ないんだっけ、来るの?
何、さっきの曲の?さあ、どうなんだろ
歌の中ではわかんないままなの?
うん確か、叶わない公算高そうだけど
 
でも、暗くはなんないわよね、不思議
毎年来ない来ないって恨んでそうなのに
はは、サンタが代わりに来るんじゃない?
んもう、あなたが言うと笠地蔵みたい…
 
六階、おもちゃ売り場でございます
白手袋の手をクロスさせてボタンを押す
開いた扉の向こうで同じ曲が小さくなる
三秒間お辞儀をして五名様を見送る
 
午後からのシフトは総合案内所
正面玄関で待ちぼうけのお客様も
腕時計をぱっと隠す赤鼻の笑顔も
たくさん見てきたな、きっと今年も
 
肩を落として立ち去るおつもりの方へ
お時間までお立ち寄り下さいませ
お買い物でなくたって遠慮はご無用で
私も誰かを待つひとりでいたいので
 
今年も精一杯笑顔でお迎えします
全館せっせとあっためてございます
いらっしゃいませ、下へ参ります
下へ参ります