Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

南京錠の誕生日

何をやっても開かなかった
古ぼけた自転車の南京錠は
誕生日であっさり開いた
一瞬の屈託で手が止まった
 
これだったら絶対忘れないし
今後もずっと変わりっこない
そう本気で思ってたのに
もう忘れかけててバカみたい
 
絶対だの一生だの永遠だの
こじらせた高二の戯言でしょ
こんな数字いくつかあるもの
わけわかんなくもなるわよ
 
その日を見て胸がシクシク
ケーキ屋の前で早足になる
片っぽだけあるイヤリング
自分が主人公になれる感傷
 
でもなんかの拍子にふと
しみじみお幸せにって思うの
調べてまで知りたくないけど
元気でいてって ほんとよ
 
自分のもう知らない未来が
あのひとにはあるんだなあ
それはちょっと悔しいかな
しばらくはそう思ってたわ
 
目が追うのは過去の背中だけ
あたりは綿ぼこりにくすんで
つまらなく見えていたのにね
ある朝久々に笑う あれ?
 
自転車を軽くはたいてから
南京錠の番号を新しくした
またいつか忘れちゃうのかな
スポークに浮かべる背中