Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

無人ノックバット

ああ、起きちまったか
ごめんごめんとテレビの消音を押した
目をこする娘の髪は寝癖でぐちゃぐちゃ
 
このおじちゃんたち、どしたの?
どしたって、その…議論してるんだろ
ギロン…ケンカしてるってこと?
 
ちょっと違うけど、どうしてそう思う?
だってみんなずうっとおこってる
いや、意見…こう思うよって言ってる
 
みんながこうおもうよっていってるの?
うん、それぞれ考えを発表しないと
考えがどう違うかわからないってこと
 
てんでにピンピンはねた髪のままで
娘は口を尖らせたまま首を傾げて
だって、きいてないよねえ
 
ん?俺聴いてたよ
ちがぁう、おとうさんじゃないの
このおじちゃんたちきいてないでしょ
 
聞き返したら思い出したようにおしっこ
おおおお、と慌ててトイレに走ると
いつもの癖でそのまま抱っこでベッド
 
茶の間に戻ると静かなテレビの中は
口角泡を飛ばし合うさっきのまま
微かに聴こえるサイレンは消防車
 
…まあ確かにひとの話聴いてねえかも
俺もわかったような顔してるけど
同時に話されてもな、聖徳太子かよ
 
聴かない相手じゃお留守になるわな
ちらとよぎる妻の文脈のない声と姿
首をゴキゴキ鳴らしてテレビを消した