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Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

ミクロとリバース

 

生物の高見先生は
まだ若い非常勤だった
眼鏡でひょろひょろと現れ
いつも同じネクタイを締め
 
先生のペットはプラナリア
6限の授業が終わったら
嬉しそうにシャーレを出す
かわいいでしょう
切ってやると再生するんです
ヤマタノオロチみたいにもなります
僕は目視で16マタくらいかな
…ああ君ら、HRの時間は?
 
うわああ、と駆け出し
脱げるスリッパ型の上履き
 
他の先生は使わず埃をかぶる
小型カメラと繋がった顕微鏡
悪戦苦闘でテレビ画面と繋ぎ
意気込んで浸透圧の授業開始
大写しのプレパラートの横に
うやうやしく現れる吸い取り紙
さあ、みんなよおく見といて
ここの細胞、ほら、これね
吸い取り紙で、さあどうなるか
固唾をのんで見守る中
ずずずと動きだすデカい細胞
あああ、待て、あ、消える…
 
…今のは、忘れて下さい
 
その年の最後の終業式
ステージのずらりに高見先生
県北の小さな高校に異動
念願叶って本採用
 
まだ先生のままかなあ
あの時のシャーレの一部は
今も元気にしているだろうか