Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

めぐりめぐって

 

どことなくつまらなそうな顔をして
娘がランドセルを放り投げて
私は絹さやのスジを取る手を止めて
おかえり、いつもより早かったのね
 
今日はひろちゃんち寄らなかったから
口を尖らせたままちょっと涙ぐんだ
ああ、困ったなあ
こういうのきっと私に似ちゃったんだ
 
あの、手洗ってさ、絹さや手伝って
違うって、今言うのそれじゃないって
娘はおとなしく立ち上がって洗面所へ
私は手が止まったままでしばし考え
 
一緒にスジを取りながらぽつりぽつり
思った通り、何か陰口を言われたらしい
怒りで震える手をごまかしお茶を一口
相手が誰かは首を振って言わない
 
気にすることないよって言われたし
あたしがやっつけてやるとも言われたし
これあげるよって、きれいな折り紙…
でもやっぱりいやだった、くやしい
 
ぽとんと涙が落ちて
私は煮えくり返る胸を抑えて
驚きの速さで絹さやを次々ザルへ
私も前に言われたんだ、なんだっけ
 
そうだ、あのね、思い出してよ
心配してくれた子の方が多いでしょ?
でもポツンとやなこと言われると
そっちだけがホントみたいに思えるの
 
お母さんも?
うん、そう、お母さんもそうなの
全部ホントかもしれないし、逆かも
それってね、大人にもわかんないの
 
あとね、どんな立派な大人だって
きっと悪口にへっちゃらなわけなくって
自分がつらさに慣れなくて傷ついて
だからひとにこんな思いさせまいって
 
言葉に詰まってほっぺをつついたら
ふうん、お母さんもタイヘンなんだ
あ、でもそれもホントじゃないのかな
なんだと?と両頬をイーッと伸ばした