Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

マッチと箱

熱心になるなんてばからしいわ
自分から夢中になるなんて損だし
必死みたいでみっともないからイヤ
僕は彼女を見る 責める気はない
 
そうだよね カッコ悪いもんね
そういうひと傍で見ると気持ち悪いし
こう見えると思うとゾッとしたりして
彼女は僕を見る 嬉しそうではない
 
暗い色の短めの爪でテーブルを打ち
タタタッ タタタッ タタタン
よくやるなあと思うわ 恥っずかしい
下心って言うかさ 見え見えじゃん
 
僕がフッと笑ったので彼女は睨んだ
なに?
僕と君が同じかどうか知らないけどさ
昔はがんばるひとだったんじゃない?
 
どういう意味よ?
すごくすごく夢中で必死にがんばって
それが何かの拍子で台無しになると
燃えてた自分ごと水浸しになるからね
 
彼女はムッと黙ってグラスの氷をつつく
少なくとも僕はそうだったし今もそうだよ
暑苦しいやつには自己嫌悪をおぼえる
二度とああはなりたくない わかるよ
 
勝手にわからないでよ 気に入らないわ
変だな だって夢中になると損だなんて
経験したひとしか言わない気がしたから
もううるっさい ちょっと黙ってて
 
しらけた顔よりは怒った顔の方が好みで
もっと泣いたり笑ったりもしていたのか
そう思うとかすかに胸底がじりじりして
癇に障りそうなことを言いかけてやめた