Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

ログのログ

因数分解なんて後々使わないし
何の役に立つのかもわからない
なんのために勉強するかわからない」
 
隣で麦茶を飲みつつテレビを観る父が
指数関数ってあったの憶えてるか?
logってあったろ?うわ、あったあった
それがないと計算出来ないんだ
何が?
放射線関係の値全般が
……
 
父は元々勉強が得意ではなくて
競争率の低い頃の受験をしくじって
当時の医療技術短大に進んで
原発からの求人もあったそうだが
人間相手の仕事の方が、と願った
祖父の意向で放射線技師になった
 
父は就職後に猛勉強で資格を取った
長らく父の厄介になって暮らす娘は
やっと心から感心したように言った
 
お父さんの受験の仇は討ったけど
logなんて今はまるきりわからないよ
あの頃、理解しようと努力したけど
お手上げだった分野に詳しいひとの
苦労を想像できるから敬えるのかも
勉強ってそのためのものじゃないの?
 
0に近づくが0にはならない
不確かな鉛筆の線のぐにゃり
汗で張り付く答案用紙に
果てしなく並ぶX軸Y軸の交わり
意味を持って立ち上がるその記憶域
 
すごいことを発見したように
しゃべり続ける娘を面白そうに
かすかに不憫そうに眺める父