Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

公共と不文律

ちょっ、やだぁ、ありえない
すっごい臭いだよね、何?
なんていうのこれ、異臭騒ぎ?
そういうんじゃないでしょ、でもくっさい
 
横で黙っているスーツの女も
モバイルフォンで世界に訴えるところ
ボストンバッグと紙袋四つの両手が出元
汗をかいて床を見つめる赤い顔の中年男
 
あー、もう気分悪くなってきちゃった
いくらオノボリでもカンベンして欲しいわ
低いボソボソ声と若い男のケタケタ
マジで死にそう、駅員に言った方が…
 
中年男は上目遣いに案内表示を睨み
周囲と目を合わせないよう首を引いて俯き
そこへ悪ふざけで押された学生の一人
ぶつかっておいて うわっ気持ち悪ィ
 
少し離れたドアの横の席から
六十がらみの男が立って袋を指さした
おい大概にせえよ、なんならおめえらは
ここのたくわんはうめえんぞ、知らんのか
 
物ぉ知らんのんもブッサイクなけえどな
おめえらは一生一回も小便もらさんのんか
じいちゃんばあちゃんはおむつせんのんか
きったねえ便所の掃除もせんのんか
 
今日もようけうんちが出とぉる、しゃんと食べ
そう言いもって親は育てたんと違うんか、え?
ちいと電車がにおうくれえですっだらこっぺ
おめえらみてえなんは肥たごぇ落ちりゃええ
 
中年男はすっかり怯えて後じさり
周りもしいんと黙って気まずく目をそらし
あんごうばあじゃ、の声と同時にホームに
薄れゆく映り込みと漂うたくわんのにおい