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Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

こぼさない涙の川

よく知っているひとが
お空の向こうへ行ってしまった
よく知っていると言いながら
会ったことは一度もないんだ
 
悲しむほど好きだったかどうか
考えてみたらよくわからないんだ
お葬式に行くってわけでもないさ
でもいなくなるってさみしいな
 
そのひとが残した歌はとても有名
テレビを観ていると息が苦しい
閉じこもる二階の部屋は蒸し暑い
床に座り汗をぬぐってぼんやり
 
手持ち無沙汰になって
センチメンタルになって
ちいさく、あー、と声を出して
そのひとの歌い方を真似てみて
 
うへほむふひて あるこほほほ
なみだが こぼれへないよほ…
なんだよ なんだよ
泣いてなかったのに涙が出るよ
 
ほんとのこと言うと
ひとのことで涙が出るよな自分を
もうひとりの自分はやさしいなと
自惚れた気がする 悪くないよと
 
あの頃は十歳の子どもだった
純粋だったし浅はかで残酷だった
今は悲しむように仕向けたら
戻ってこれなさそうで怖いんだ
 
歌わなくても想像しただけで
泣きそうだから歌えなくて
もうひとりの自分は斜め上で
静かに睨むんだ 死ぬなよって