Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

神崎緑地の散歩

背後からのんびりした声がする
ああ梅のええ匂いがしょうる
立ち止まると押されて進む車椅子
花粉症の私はマスクをずらしてみる
 
桃の節句の桃の産地
桃の花にはまだ早い
旭川百間川吉井川を渡り
迷子寸前狭い道 看板辿り梅まつり
 
ゴフクシダレ ギョッコウシダレ
セツザンシダレ ベニシダレ
ちいさく読み上げながら振り返って
逆光でうっかり通過したゲートの影
 
知り合いらしい犬連れのひと
挨拶を交わし ええ子にするんよ
どちらも白い犬と犬とリード
じっと見合って一瞬の間のあと
 
ウワワワン 切って落とされる火蓋
ぬおっ、来たっ、と見るフサフサ
わっ、これ、やめなさいシロ、こら
もうごめんなさいねえ いぃやぁ
 
犬はまだやあやあ我こそは真っ只中
おかしくなってマスクの下で笑った
昔は急に吠えられて怯えたものだ
吠えるものと知ったら怖くなかった
 
似たことがきっと他にもあるだろう
知らないことを知らないで遠目に見る
わかったらちょっとずつ面白くなる
慣れてしまうと親しみ以外は忘れる
 
いつ他のものと見分けられたのだか
もはや憶えていない梅の木と青空
うっかり忘れず約束もせず咲く花
ポン菓子大判焼き緋毛氈にお茶