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Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

カニ歩きの母娘

カニ カニ カニ カニ
…カニが何?
カニみたいに横歩き…
両手でチョキ、そのまま寝息
 
寝言かよ、と独り言
いつもくっきりはっきりの母の寝言
書くことないかもと思っていたけど
何やかやあるな 瑣末なことだけど
 
その母のいぬ間に片付けをする
ボロボロの皮のバッグから出て来る
伊藤博文千円札、岩倉具視五百円札
それから新聞切り抜きと育児記録
 
犬印妊婦帯の箱に小さなノート
「自分で何でもやらせる一人っ子」
理想はあったらしい若かりし母よ
「絵…近所の画家」これは習ったよ
 
「二人っ子…上の子を立ててやる」
「三人っ子」単語に区切り丸で囲む
「中の子を上手にほめてつかってやる」
予定はあった?ひとりだったな結局
 
自分の思い出が捨てられないなら
親の分を今のうちにと思ったんだ
きょうだいもいないならいずれは
自分の宿題になるのだろうから
 
でもねえ、案外難しいんだね
親は見知らぬ自分を懸命に育てていて
やりくりの俸給袋を捨てられなくて
つい突っ伏して泣いたりしてね
 
母はまた寝ぼけ眼でむくり
時計を見てまたすやすや寝入り
夜泣きはしなかったという遠い私に
それだけでも楽させたかねと苦笑い