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Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

海路の日和

穏やかな瀬戸内海を渡る快速電車が
久々に風で立ち往生、折からの寒波
早々に運休アナウンスの出た翌朝
珍しくオタオタせずにご飯を食べた
 
あるいはそんなこともあろうかと
こちとら調べてあんだ次善の策を
フェリーはどうやら大丈夫らしいぞ
代替輸送が船ってちょっと壮大かも
 
実はこっちの方がわくわくするかな
港の最寄りの駅までは乗り継ぎ電車
これも初めてだな 間違えないかな
まあもういっそのこと楽しんだ方が
 
そこで心配性の父から着信あり
トレースされるここまでのあらすじ
乗り換えは大変だ家に寄りなさい
港には車で送ってやるそうしなさい
 
ちぇっ、を飲み込んでうんわかった
港のある街は両親の生まれ故郷だ
船の行き先は母方の祖父の里だ
その隣県の小さな街で私は生まれた
 
橋の開通は四国を出た後のことで
国鉄連絡船バスを乗り継ぐ帰省で
救命胴衣のマネキンにぎょっとして
買ったゆで玉子の塩を床にぶちまけ
 
浮かない思い出だとずっと思ってた
祖父母に構われてもむつっと黙った
三十年後、頬が切れそうな風の中
乗り場の待合所を飛び出しそわそわ
 
ゆっくりと接岸する正午発の大型船
俺の海よォ、待ってろ至福の時間
くよくよ頬杖のまま止まった更新
拾った命で返せる気がするどんでん