Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

地蔵とひとり

道端の小さなお地蔵さんが
あんまり寒そうだったから
昔買った毛糸を探して編んだ
赤い帽子とグレーのマフラー
 
目を閉じてなむなむと手を合わせ
少しぶかぶかの帽子を整えて
バスの整理券 窓際で揺られ
対向車線の赤が消えるまで眺め
 
その日の夜
ボロ屋の引き戸を叩く音がする
こんな時間に誰だろう
からりと開けるとお地蔵さんがいる
 
…え
どういうこと、うちに…なんで?
百歩譲ってお話でもこういうのって
殿方が現れるか米俵が届くかで…
 
あああたしひとりで何言ってんの
とにかく、その、寒いから中へ入ろ
うん、どうするかは明日考えよ
せーの、よいしょっと
 
畳の線香の焦げ跡 新聞紙の上
お地蔵さんは鎮座ましまして
ラーメンのどんぶりを念入りに洗って
振り返ってもやっぱりどっしりいて
 
お風呂と歯磨きを済ませ布団に入る
すぐうとうとしてお地蔵さんが浮かぶ
夢でも黙ったままでぽつんといる
朝起きてみてもやっぱり部屋にいる
 
薄暗い玄関で折り畳み台車を出すと
わかんないけど、ありがとうなの?
だと嬉しいな、どう致しまして、よ
乗ってって、またいつでもどうぞ