Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

時系列の舟

あの頃は楽しかったよな
恋人もいて若くて元気でさ
その前は学生証で大概通った
今思えばそこそこ優遇された
 
それは嘘でもないけれど
戻りたいとは思わないよ
だって終わったことだもの
茶漉しを通ったあとだもの
 
角が取れて丸っこくて
すべっとした石ころを拾って
転がる岩だった鬱屈なんて
そのうち忘れてゆくわけで
 
アオサギが見下ろす川面
淀みも魚影も照り返しも
ひっくるめてひとつのもの
切り出せないし戻せないよ
 
あの時もっとこうしていれば
もっと若くて勇気があれば
そっちをなでてもいいけどさ
その時はそうしたわけだから
 
あの時ああしていなければ
あいつさえいなければ今頃は
最近は忘れっぽいもんだから
恨み悔やみの余力がないや
 
いつか自信が持てるなんて
思ってるんじゃないだろうね
あの世じゃ大抵はじめまして
行けども行けども覚束ない舟
 
ぽうっと首を傾げる子どもも
明日目覚めるおとなの自分も
これから知ることがあるよ
怖いかい? つかまってろ