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Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

ひっつめと水割り

 

先生、本日は貴重なお時間を賜りまして
生真面目そうなひっつめ髪のうら若き娘
ああなに、構わん、まあ座りたまえ
ハイ、それでは失礼致しまして…
 
その銀色の四角い棒は何かね
あ、これはボイスレコーダーですね
レコーダーというと、録音機かね
気に食わんな、メモでも取りたまえ
 
いえでも、他の方でもいつもこうですし
伺い忘れがございましても困りますし…
すぐ憶えられんことは忘れるがよろしい
そうは参りません、上の者に叱られます
さほどお邪魔にはならないかと存じます
直に話してやったことを解さぬやつが
音を引き写したところで始まるものか
 
きっと気色ばんだ様子の眉間を
無遠慮に眺めながら玉露をすすると
例えばここいらの夜の店で酒を呑む
店の女性に下衆なからかいをする
夜もすがら互いにあしらいあしらわれ
そのうちうかっと引き出される本音
それを相手は心に留めているもので
しかも憶えているとは誇らないね
 
沈黙の薄いアイシャドウは侮蔑の色
悪くとらないでくれたまえよ
礼儀正しく杓子定規な君も悪くないが
相手の講釈のたびに呆れていては
大概の男の相手は出来んものさ
ひとをいい気持ちにして帰すのは
なかなか骨が折れるということだな
 
…無論、自戒も込めて、だがね
ひっつめ髪は細い指をつと伸ばして
銀色をカバンにしまいこみ咳払いして
ではお願い致しますとちょっと睨んだ
弾みそうな気分でこしらえる渋い面