Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

ひこばえ

 

見上げても見下ろしても桜さくら
河川敷をそぞろ歩けばお堀端
 
数日前の嵐がしっぽを引きずり
随分な風でピントは合わない
諦め悪くレンズを向け立ち止まり
少し視線を緩めて見回す周囲
 
木陰から泣くような笑うような声
やーっ、やぁーっ
大丈夫だったら、おいで
やーっ
 
大事を疑うほどでもないけれど
なんとなくそっちへ足を向けると
ひと抱え半はある低い切り株と
その上で立ちすくむ幼い男の子
 
そばではお父さんが手を広げ
おかしくてたまらない顔つき
乗っけたのも多分お父さんで
男の子はすっかりおかんむり
 
せーの、ポンって、ほらっ
しゃがんでもにょもにょ口の中
お父さんはついに笑いだした
なあんだ、意気地なしなんだ
 
一瞬沈黙、汽笛みたいな声
だしぬけに不恰好に落っこちて
すかさずお父さんが抱きとめて
背中をよしよしさすって細める目
 
二人はそのまま歩いて行った
切り株に思案顔で近付く私は
なんの木だろうと考えるふりで
上に乗るか迷った挙句やめて
 
細かい枝々の木洩れ日
散り敷く桜と苔をパチリ