Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

誤差とオマケ

 

長机を並べて真新しい本を積む
人懐こい好奇心 素知らぬ表情
 
整理券は係の者にお渡し下さい
付箋にお名前を書いてお並び下さい
他のお客様の御迷惑にならないよう
右に寄って一列でお願い致します
 
来る側にも話したいことがたんとあり
気まずさの懸念は杞憂に終わり
何度目だとか、一緒に写真をとか
同じ母校ですなどと向こうも楽しそうだ
こういうの得意じゃないんだけど
喜んでもらえたみたいで何よりかも
 
予定の人数が概ね終了して
少し手が空いて視線を緩め
ずっと残像めいてチラチラしていた
冴えない男の子が目にとまった
 
本も買わないし列にも並ばない
物見遊山かな?
思い詰めたような顔で俯き棒立ち
よからぬことたくらんでないよな?
 
やがてその子はスタッフに何か伝え
スタッフが眉を寄せ小走りでこっちへ
本は買えないんだけどお話したいとか
いかがなさいます、お断りしましょうか?
 
いいよ、子どもだろ?連れて来な
おどおどと前に立ったその子は
あのう、いつもいえできいてます
うん、うん、ありがとう
でんしゃまちがえて、おかねたりなくて
え、ひとり?どっから来たんだっけ?
ほっかいどうです
思わず大きな声を出して皆振り返る
ご、ごめん。そりゃ大変だったろ?
頷いて初めてホッと息をついて笑うと
でも、おはなししたかったんです
いつもげんきをくれてありがとう
 
…あれで帰してよかったんですか?
手に本を持ったままのスタッフが咎めた
俺だったらお情けでもらったりしたくないや
またお小遣い貯めるつもりじゃないかな
嬉しいじゃないの、俺が恵む側なもんか
 
エレベーターの前で足を止め
ぺこりとお辞儀をして手を振る影