Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

ボンベの火種

 

朝のニュースで連呼されるボンベ
四十も近い娘がフッフと笑って
ごめん、笑い事じゃないんだよね
なんかこう、おかしくなっちゃう音で
 
小さな丸い鏡で上目遣いに抜く白髪
その鏡の中のテレビを観ている母親
音が何かおかしいのかい?
「ボンベ」って単語、面白くない?
 
権兵衛が種まきゃ烏がほじくるとか
どん兵衛に飲兵衛、あかんべとか
うーんと、長万部も笑っちゃうかな
こういうの理屈じゃないから困るなあ
 
どうでもいいことを機嫌よく話す横で
白くない毛をうっかり抜いてイテテ
今ぁ権兵衛も種まかん、ボンベねえ
笑わせる腹積もりなら並だのにねえ
 
でしょう、私もそう思うんだけど
フキンシンだってこらえる反動かも
法事で足がしびれて転げたら笑うけど
酔って倒れたなら別に笑わないもの
 
でも「爆発物」だと笑わないかな…
ぶつぶつの横の鏡の天気予報に傘
ちょっと牛乳入れて来てくれんかな
うん、トーストとジャムにしようか?
 
ホットミルクを作りつつなおも独り言
電子レンジ…は、別に面白くないか
ドドンパ…は、ちょっと面白いかな
まったく誰に似たのかねえこの子は
 
いつの間にか起きて来た旦那の寝癖
とんびにあぶらげ、はもう言ったかね
とっちらかる眉毛と糸のような目を眺め
白髪のちり紙を畳みながらさあねえ