Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

墓穴マニュアル

 

爪切りが見当たらず娘の部屋へ
呪術の本が机の上に積まれ
プリントアウトされた「人を呪う」
ぎょっとして帰った娘を問い詰める
 
「勝手に部屋に入らないでよね」
「それは悪かったよ、しかしお前…」
「ああいうの読んでたら即犯罪者?」
「違うけど、物騒じゃないか」
「ひっぱたいてくればいいわけ?」
「それもアレだけど、陰険じゃないだけ
そっちの方がまだ俺は好き、かな」
「ダメよ、腕力じゃ勝てないから」
「話し合えないのか」
「無駄よ、聞く耳持たないわ」
「だからってあんまり非科学的な」
「信じてないなら止めなくたって」
「お前にしては妙にしつこいね…」
 
世に曰く、人を呪わば穴二つ
「覚悟してる、読んだもん全部」
「じゃあまあ、ほどほどの呪いで」
「冗談じゃないわ、馬鹿にしないで」
 
末代まで延々辛酸をなめ続けてもらう
死んでもいいのとうっとり遠くを見やる
 
「育てた俺にそれを言うんじゃないよ」
「ああ、それは悪かったけど」
「大体、末代がそいつじゃないんなら
案外その家繁栄しちまったりしてな」
「あ、そうか…」
 
こいつがこんなに怒ることがあるとはな
相手が何をしでかしたかどこのどいつか
詮索し過ぎると俺が張り倒しかねない
だから今日のところは訊かない