Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

汗ばむ潜在

 

ごめん、なに?
黒板ふきクリーナーのガーガーを切り
制服のスカートがひるがえる
一瞬遅れて収まるポニーテール
 
カッターの腕まくりの左右の高さを
慌てて指の感覚で確認しながら
新しいチョークってまだあるの?
あ、そうね、ないかも
 
じゃ俺取ってくるわ、とすぐ踵を返し
背中でありがと、お願いねを聞き
あーもうちょい話のばせたのに
どんな顔してたかなとため息
 
出席番号が同じなだけで
他にはとりたてて接点もなくて
給食袋や習字道具は忘れても
週番は忘れないそれだけのこと
 
職員室の前の蒸し暑い用具室
つまみ出す白ピンク黄青のチョーク
先週より濃い緑とロードワークの声
ブラスの残響に上の空で教室へ
 
ヘナヘナした箱を教壇に置き
席で日誌を開いて鉛筆を取った時
やっ、という悲鳴で床が彩られる
折れちゃった、どうしよう
 
一緒に拾いつつブラウスの襟を見て
どっちみち折れる、構やしねえって
でも
タン爺には俺が適当に言っとくよ
 
振りかぶって小さいかけらを投げ
後ろの黒板にカコーンと当たって
まだ困ったままの顔を一瞬見たら
もやっと浮かびかけた台詞ごと忘れた