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Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

アングルと彩色

無作法だな、あんな恰好して来るとは
と言われた男は火事に遭ったばかりで
支援のない窮状を訴える健気な母は
発信した後でブランド品をうっとり眺め
恋人の欠点をあげつらう酔いどれは
店の厠で次のデートの約束を取り付け
虫も殺さぬ清くしおらしい乙女は
駅に横たわるボサボサ頭に顔をしかめ
 
そこまで単純じゃないだろうけどな
ただぜんたいはしょりすぎじゃないか
ひとってものは
その場の一事が万事じゃないんだ
許せない基準がなんであろうといいさ
君は相手の何もかもを知っているか?
 
今正しいと感じることとそうでないこと
どちらもいつ何時変容するか知れない
たとえばそうだな、僕は若かりし頃
婚前に孕ませる軽はずみを嫌悪し
その後身内がそうなりしばらく経つと
子のない僕より幸せな気もして黙り
自分だけが自分の道徳で正しくとも
それだけじゃ決まらないことも多い
 
理不尽にハラを立てたっていいんだ
どうにかなって壊れちまうくらいなら
自分とまるきり同じ人間はいないから
がっかりして蔑みたくなる時もあるさ
それが本音か十年後も同じ意見かは
恐らく当の本人にもわからないんだ
 
線を引くほど狭苦しくなっていく道理
命の区切りさえもどこか曖昧だもの
生まれたり死んだりする転調の前に
瑣末な違いは滲み混じりひと色
絵の具を全部混ぜたことあるかい?
さほど鮮やかにはならないけれど
途中途中の名もない色も悪くない
ぜんたいそんなものかもしれないよ