Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

100×148

 

普段はお互いきりきり牽制球
ついたてのしようがない年賀状
 
会ったこともないひとなのに
文字や写真で毎度お馴染み
御無沙汰子育て奮闘記
笑顔一年分取っておき蔵出し
孫誕生趣味は彫刻寄る年波
 
幼い頃の年賀状は
印刷物では無論なくて
うちでは父が作るもので
最初の記憶は版画だった
 
ベニヤの壁の平屋の居間
畳にちょんと座っていたら
最初は黄色だけ刷られた紙
私はそれをうやうやしく受け取り
端っこの襖の前で神妙に並べ
土間には夕餉のにおい母の背
 
乾かしては赤青黒
トレーシングペーパーの元絵と
色づいたぼこぼこ板とバレンと
 
そのうち自分で書きたくなり
手書きにピカッのプリントゴッコに
ファミリーコピアにカラーペンに
ワープロにパソコンとプリンタに
 
父は毎年やめようかとこぼしている
私はいまだばかみたくしこしこ描く
母が呆れつつそれを待っている
 
欠礼の続いた時期もあった
余計に浮かないものでもあった
 
照れくさそうな写真や筆文字や
親しいひとたちの改まった気配が
手に手を取って連れてくる
私と同じ年頃の親の遠い日常