Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

でものはれもの

あいつはああいうやつだから
関わり合いはほどほどにな
当たり障りなく受け流してさ
あとは放っときゃいいんだ
 
いろいろ事情があるんだろ
地雷が多くていやんなるよ
変に触ってへそ曲げられても
こっちにゃ何の得もないもの
 
楽しく笑って盛り上げりゃ
ごきげんよくいてくれるさ
怒られたらごめんなさいだ
スパイスにSっ気の無礼もな
 
実際ご満悦の素振りではある
でもなんとなくさみしそう
触らず遠巻きのひともいる
触って逃げ出すひともいる
 
ある日、どこからともなく
ヘンテコな仮面が現れる
マントはあるが飛びもせず
紋所よろしく何か取り出す
 
ある時はオロナインH
またある時はたこの吸出し
しかしてその実態…
塗りましょう、おくすり
 
腫れ物触ってどうしますか
神様なら治るんでしょうが
あなたにおできが出来たら
何か塗るんじゃないですか
 
いたたたに指で塗ったくる
ぐるぐるっと包帯を巻く
名乗るほどの者ではと笑う
とうっ、と叫び徒歩で帰る

よしよしわたし

久しぶりに馬鹿の風邪で
お風呂ストレッチは休んで
お風呂掃除はささっとして
おでん食べてぐっすり寝て
 
今のところ咳は出ないし
鼻炎は風邪薬で軽くなったし
喉はちと痛い 食欲はあり
はちみつにカモミールティ
 
なんだか贅沢な話だけど
持病以外の不調や病気を
いたわる時間も悪くないよ
大義名分って大事なのかも
 
健康に越したことはないし
伴侶の手厚い看病もいい
病院に駆け込むひともあり
仕事を休めないひともあり
 
でもまあ 自分の都合を
いくつか横へ片して休むと
それなりに回復する程度の
ぼうっとする日は滋養かも
 
ほら 子どもの頃にさ
絆創膏とか腕の三角巾とか
松葉杖姿を少しうらやんだ
あの感じかもしれないな
 
いたわってもらえないって
化けて出たい時期があって
いたわる相手がいないって
おひとり自虐の頃もあって
 
ひとの痛みに寄り添うなら
自分のつらさもわかんなきゃ
やっとそのあたりに着いたら
ホットレモネードは甘やか

虚しき口より

騙しやがって許さねえ
損した責任取りやがれ
嘘つき!嘘つき!って
そっちじゃないんだよね
 
嘘なんてついたこともない
汚れを知らない聖人君子
元々そんな人間じゃないし
むしろ慣れ親しんだ話
 
嘘が生活の一部だった頃
心晴れる日はなかったよ
優先事項と信じたものの
得意にはなれやしないよ
 
十年以上経ってみれば
正しいとか間違ってるとか
基準自体が怪しいもんさ
踏んだ花もたくさんあった
 
あの時つらかったんだな
ほんとは助けて欲しかった
騙し抜けると見くびった
虚栄だと気付いてもいた
 
生まれついてのペテンで
楽しめるひともいるかもね
少なくとも自分は違って
聴くと息苦しい それだけ
 
嘘に気付く人間ってのは
自分もヒヤヒヤしたのさ
違和感を拭い取るためなら
ひとの犠牲も厭わなかった
 
正義感なんかとうに忘れた
敵陣の丸腰 イチかバチか
つらくないならいいんだ
つらい顔を見たくないんだ

人型の錠剤

邪魔なんてしませんよ
お望みならば消えますよ
刺された釘は刺すかもよ
基本人畜無害 無力なの
 
意図的な嫌味なら
対等なひとってことだから
まだマシかもしれないな
文士曰く無意識の殴打
 
ひとの幸せに尽くすって
むずかしいもんだねえ
神に選ばれしひとにだけ
許された特権なのかもね
 
さておき ともかく
自分は自分を生きられる
つまずきや嘘を探し回る
赤目の自分は浅ましく
 
まだ寝られているし
なんなら寝過ごしてるし
食べられてもいるし
案外なんともないらしい
 
気に食わない厄介が
自分に降り掛かった時は
守ってくれるひとがいるさ
少なくともそちらには
 
昔と変わらないように
がっかりさせない程度に
少しずつ老いていくといい
こっちは気にしなくていい
 
薬は裏切らないんだ
置き去りにもしやしないさ
どうかしてるやつの支えは
人間じゃない方がいいから

五十歩一歩

29から30、49から50
大台に乗るたんびに超凹む
愚痴ってたけど最近どう?
やっぱりまだ落ち込んでる?
 
いや…まあそんなでもない
俺今50でって自分から言うし
言い続けりゃ馴染んでくるし
こんなもんじゃね?って感じ
 
想像してたサイアクよりは
現実の方がいいってことか…
努力で時間は止まんないから
割り切れんのかもね、まだ
 
あと、なんか年取ってったら
中心から外れてくっていうか
ひとが次々離れてくみたいな
そういう想像してたっぽいわ
 
そっか…今は違うの?
ま、不安もゼロじゃないけど
日に日にポンコツになるのも
それはそれでおもしろいかも
 
うん。そういや教習所で
車庫入れ一発で決めようって
あれ何こだわってたんだっけ
切り返しても慌てなくなるね
 
あと、どこの誰だかわからん
有象無象にまで構ってられん
俺が財布に見える輩も知らん
俺の蓄積が基準でいいじゃん
 
そうそう、遅れて目が合う
ヌケサクもたまにはいる…
あ!忘れてたドリップのお湯!
何やってんだよお前はもう

幽霊レプリカ

よく出来たアンドロイドが
ギロリとこちらをねめつけた
いかにも言いそうな台詞が
絶妙の間合いで再生された
 
そりゃあね 俺は確かに
化けて出てくれて構わない
望むところだと祈りもし
つまりは願ったり叶ったり
 
なのになんだろうなこの
おののきと妙な胸騒ぎと
はっとあふれた懐かしさの
冷えつつ固まるさみしさと
 
似ても似つかないよりは
似ててくれた方がいいさ
でも途切れたままの記憶には
ツギハギしたくないかもな
 
よみがえりでも夢でもなく
それっぽいことをしゃべる
発話データならたんとある
進化する音声認識システム
 
死んじまったのに忘れてさ
自分でも気付かないままでさ
抱かれてるのは確かに俺だが
抱いてる俺は誰だろうてんだ
 
こいつは違うよってのもねえ
無下には言いにくいもんだぜ
だってさ よかれと思って
走ってきたんだろここまで
 
余人をもって替えられたら
俺、いなくてよくないか?
ひとですらないってんなら
抱いてるこれはなんなんだ

理屈+感情=ひと

ひとに何かを教わる時は
感覚よりも理論がいいな
上や下でなく対等な立場
それなら感情が響くかな
 
今までと辻褄が合わない
だからここでは言えない
恰好を気にかけるうちに
並んで歩くひとがいない
 
今はそうじゃないことに
なってるからさ お願い
イメージ戦略は結構大事
信じて待っていて欲しい
 
なんてことない間違いが
ごたごたに積み重なった
突然ぶっくりかえる時は
くしゃみひとつのことさ
 
笑い事にはしたくないし
考えたって埒が明かない
お得意の理屈も消え去り
我ながらみっともない
 
話すことが出て来なきゃ
話すことないって言いな
考えてることが出るしさ
取り繕ったってバレんだ
 
むせび泣きつつ支離滅裂
ギリギリまで着地に迷う
国語なら追試にもなろう
でも迷いの体温は伝わる
 
うまくやろうとしたって
ひとは懲りずに傷つけて
真心ならよかれ悪しかれ
どこかには転がる賽の目