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Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

生きる大義

死にてえなあ
頭の中で弄んだその言葉が
目ピリ鼻ツンで食道を通過
胃壁を逆撫でて吐きそうだ
 
耳たぶと唇が寒くって
やってられねえ
向こうから近づく子連れ
ぺんぺん草に笑い声
 
何かこう 通りのいい
ごもっともな理由が欲しい
成績悪いし友達いないし
それじゃあみっともない
 
世界が滅びるとかさ
戦争で死ぬとかさ
俺のせいじゃない何かが
俺を俺からはがさないか
 
急に伸びた背はみ出た手首
その手を突っ込むポケット
からっ風が耳元で泣くと
ああううと女の声がするよ
 
また今朝も生きてやがらあ
誰も求めちゃいねえのにさ
塩っ気のきつそうな塩鮭が
焼ける匂い 玉子のジャー
 
ハラが鳴って体を丸めて
布団に潜るとおふくろの声
さっきまで見ていた夢って
なんだっけ
 
ああもう死にてえなあ
考え飽きた言葉を飲んだ
なんにも知らないイヌが
リードに尻尾を振るから

大いなるお世話

だからハラマキしなさいって
言ったでしょ、バカねえ
遅くまでビデオばっか観て
湯冷めすると思ったのよね
 
げっ、あれ見られてたのか
映画だけにしときゃよかった
頭であれこれ言い訳しては
声は出せずに咳き込んだ
 
カッコ悪いとかうるせえとか
親の顔見りゃ口ごたえするから
バチが当たんのよ、わかった?
蹴り上げた足が空を切った
 
ピピッ ピピッ ピピッ
何度?あら38度 寒くない?
ごろんと背中を向けて無視
もう…いることは言いなさい
 
布団をかけ直して出て行く
ホッとして手提げ袋を探る
紙片にぼやけた目を凝らす
やべえ今日までかどうする?
 
こういうやつで延滞とか
超恥ずかしいやつじゃんか
どうにか抜け出せねえかな
考える間もなく戻ってきた
 
あとでおかゆさん炊くわね
とりあえずお腹慣らして
すりおろしりんごと赤い手
んだよもう、うれしげにして
 
はい、あーんしなさいよ
(…冗談じゃねえっつうの)
ん、何よ、怖い顔しないの
(かわいい女子と思え俺よ)

よいお年を更新

そう言えば去年の今頃は
ひどい大喧嘩になったんだ
十代の頃 四十路はみんな
おとなになるんだと思ってた
 
こんなにささくれてる時に
年に一度のひともいる賀状に
この手で何か書くなんて怖い
ふて寝する ああ時間がない
 
今年は今年で
スケジュールは大差なくて
なんだかんだ時間がなくて
でものんきに母の話し相手
 
喧嘩したのは同じ母だけど
少しはコツを掴んだのかも
ここで私が怒りに任せると
自分がいちばん困るんだよ
 
「頭の上のハエも追えずに」
うっかり口に出した不用意
いやそういう意味じゃない
言い訳の山 あとの祭り
 
なんつったらいいのかな
見つかるまで探すことだ
すぐにわからないときは
無理に言わないことさ
 
どう取られるか悩みながら
笑って欲しいと願いながら
話すのはむずかしいんだな
なんにもわかってなかった
 
言いたいこと言える相手が
おるかおらんかで違うな
そう言って今年の母は寝た
続き続き 起きろプリンタ

堪忍袋を担ぐ

とうちゃんはかってだよ
そんなにいいカッコしたいの?
かあちゃんがまたなくだろ
そんなんだったらもういいよ
 
真っ赤になって見上げ地団駄
こっちだって酔っているから
トボけたフリで半笑いしたら
ドアをバーンと閉めていった
 
ガキの癖に生意気言いやがる
嘘でも親は立てるもんだろう
ったく何教えてやがんだ学校
脇腹をかきつつ冷蔵庫を漁る
 
乾いてヒビが入ったチーズを
おもしろくもなくかじると
壁のカレンダーに合うピント
ああ、いけね…忘れてたよ
 
あいつが怒ってたのは
多分それじゃないだろうな
でも一事が万事こうなんだ
やっぱり俺が勝手なのか
 
抜き足差し足こども部屋
音を立てずそうっと開けた
だんだん目が慣れてきたら
床に捨ててあるでかい靴下
 
参ったな 気付いたのかね
大きくなってたんだなお前
眉間に苦しげな皺を寄せて
疲れる夢を見ていそうで
 
どんな願いでも叶えると
生まれた時は思ったんだよ
俺がサンタに頼みたいよ
どうかもっとマシな父親

ノックの表裏

解決しなくてよかったの?
一瞬ぐっ、と詰まりつつも
…うん、いいの
言いつつ思う ほんとかよ
 
話したら気が済んじゃって
聴いてくれてありがとね
もうこんな時間 寝るかね
気付けば自転車二人乗りで
 
解決しなくてよかったの?
その背は責めてやしないけど
与太話が目的地なわけないよ
一体どうしたかったんだろ
 
あちこちに落っこちていた
切れっ端を縫い合わせたら
あらすじが見えた気がした
涙で終わる このままじゃ
 
幸せなら影法師になるけど
そうじゃないなら出張るよ
元はふかふかだった毛布を
切り裂いたのは何だったの
 
そういう気じゃないのかな
どっちも探ってばっかでさ
舵を切った方が答えなんだ
もうしょうがないじゃんか
 
二人乗りなんて違反だって
そういやそうなんだけどね
カーブで重心を左に合わせ
派出所の前でパッと降りて
 
乗るかって訊いてくれたなら
これくらい造作もないんだ
そこまでしたくないんなら
帰り道は自分で探すがいいさ

夢色の白旗

うとうとと眠りに落ちる
あと五分と唱えまどろむ
眠りの外より遠いうつつ
絵筆の色が水面に広がる
 
これよりいい夢は見ないし
これより麗しい現実もない
うすうすわかっているのに
起きなきゃいけないらしい
 
いっそがっかりしないかな
何もかも幻想だったなら
静電気がぱちんと来たら
乾いた現実に目覚めるんだ
 
捨て鉢と冷えてきた眉間と
溜息と徐々に狭まる視野と
猫背に見えるだろうけど
いるだけで目一杯だよ
 
三分前の秒針が進む左手
ぎりぎりに背筋を伸ばして
ちゃんとしたひとに化けて
ままよ、どうにでもなれ
 
深々とお辞儀
つられてお辞儀
くらくらして血の気が引き
顔を上げたらはじまり
 
あれ恐れていたのと違うな
思っていたのと違わないな
威圧だとか幻滅だとか
何もない そのまんまだな
 
ポカンとしてあっという間
拍手をしてお辞儀をしたら
耳にぼうっと血が灯った
やっぱりそうか 困ったな

観音開きの蓋

勝手に願うことはあるけれど
全然違ってたって別に平気よ
トホホだけど慣れっこなの
裏目に出るのはよくあること
 
勘違いを勘違いと知るのは
それを確かめようとしたから
ぎゅっと目を閉じていれば
影ひとつない夢は箱の中
 
これとおんなじ終電で
パンパンに腫れた足で
泣いて帰ったこともあって
こんなに暗いんだなあ窓って
 
何度も同じ手を食わぬよう
きっと楽しんでみせましょう
気の置けない友にも会える
次の日だって豪華にしてある
 
したたかになったのかな
ポカもやるかもしれないわ
話の種だしなんとかなるか
それをあなたに教わった
 
何もかも楽しいベタな日は
思い出せないからいいのさ
ところどころ落ち込む日は
後で笑えるからいいのさ
 
あるものは探さなくていい
ないものも探さなくていい
なくしたら次を探しなさい
先は長いし短いし 昔は昔
 
蓋を開けたら体育座りで
膝で涙を拭き口をとがらせ
まだ平気なフリをするのね
気をつけて行っておいで