Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

衆人の輪

片思いしている同級生に
長く連れ添ったご亭主に
一言メッセージを下さい
マイクと期待の眼差し
 
まんざらでもないひとも
勘弁してくれよのひとも
いていいと思うんだよ
人前ってのは厄介なもの
 
そういうのは直接言うから
困らせるかもしれないしさ
恥かかしてもなんだから
ついでにされたくないんだ
 
皆さんが立会人になって
どうか見守って下さいね
でもひとの目に囲まれて
言ったその返事って本音?
 
相手と二人きりだってさ
正直に話せるか五分五分だ
ひとりでも他のひとだから
カッコつけたくなるんだ
 
広めることは薄まること
ぎゅっと固めた気持ちも
粉々になって飛び散るよ
受け止められるといいけど
 
見られていると思うから
いつもより笑ってみせた
いつもより怒ってみせた
言い訳は犬に聴かせた
 
万人向けの本音などない
気付いているはずなのに
ひとにはあると思いたい
頼めばくれると思いたい

おひがみさまと福引

週末の話なんだけど
うん、どうしたの?
お正月休みだっただろ
焼肉屋で集まってたんだよ
 
その焼肉屋の店員について
説明しようとしたところで
彼女はすっと顔を曇らせ
誰と?集まってたって
 
え、いつもの連中だよ
まあちゃんと入道とゆみと
お前も会ったことあるだろ
…そうね、知ってるわよ
 
それでさ、新入りバイトが
注文全然聴き取れなくてさ
チャンジャ ちぇんじゃ?
しまいにゃまあちゃんが
 
ふーん、そうなんだ…
最後まで言ってないぞまだ
ああ、そうなんだ
なんだよ、どうした?
 
別になんでもないわ
おもしろうてようござんした
なんだよその言い方
笑わせるどころじゃないな
 
つまらない顔をして別れて
帰る道々に思うそれぞれ
あーあ、感じ悪かったよね
飯も食わずに帰るって…
 
おどける心を真顔で踏む
おひがみさまの仕業だろう
お互い明日のくじを引く
もっと楽しくおもしろく

あれかしの声

去年の質問に今年お返事
気の長い黒ヤギ白ヤギ
お年玉のはがきは食べない
取り立ててご用はない
 
もうだんだん減らしゃ
ええんじゃねえん?と母
そんな細々書いたってから
えろう見よりゃせんから
 
あんたは教員しよった時は
ええ先生じゃったらしいが
ひとのやる気が出るような
言い方くらい出来んのかな
 
必要かどうかを言えば
なんとも言えないものが
いくらでもあるんだよな
仕事だってそうじゃないか
 
会議資料が出来なくたって
鐘がうまく打てなくたって
あーあってなるくらいで
本気で困ってやしないよね
 
なくてはならない
あってもいい なくてもいい
ない方がいい やめて欲しい
見た目ほど楽でもないのに
 
やめちゃえば?の方は
気にすることないから
その時のそのひとがただ
いらないってだけだから
 
いらないことを探すより
あり続けて欲しいものに
時間いっぱい向き合いたい
作る業は業であっていい

両親と良心

サンタさんの恰好をして
ケーキを売る店の前
サンタさんの恰好って
見た目より意外と寒くて
 
下にダウンを着込んだり
カイロを握りしめたり
お客さんがいない時に
ヒゲを飛ばすくしゃみ
 
自分で言うのもなんだけど
他のよりホンモノっぽいよ
中のケーキにヒイラギを
一個一個飾ったのも僕だぞ
 
不意に裾を引っ張られた
うん?と振り向いたら
真っ赤な頬の男の子が
じいっと見つめた
 
お おお こんばんは
ケーキをご所望かな?
ごしょも? あ 違うか
お父さんかお母さんは?
 
なんかね みつかんないの
はぐれちゃったの?迷子?
サンタさんはどうしたの?
まだここにいていいの?
 
僕…わしは大丈夫じゃ
おてがみよんでくれた?
ご両親らしき若い二人が
駆け寄ってきて頭を下げた
 
ケーキ下さい 小さいの
お手紙多くって大変でしょ
なんの 毎年楽しみじゃよ
いい子にして待つんじゃぞ

緞帳の内外

今日は疲れてんだよなあ
他にすることだってあるさ
誰が待ってるっていうんだ?
ああもう行くのやめよっかな
 
そういうぐずつきが
来るまでに何度かあった
やったら終わるから
終われば終わるから
 
ひとりひとりそうだよね
キューを振られて切り替えて
楽しい顔 楽しい声
気持ちは後からおいで
 
ほんとうに億劫なのは
他にある片付かないことだ
ずるずる始めてみたら
そのうち笑い出すんだ
 
また落ち込むこともあるよ
逃げたくなることも
時には逃げて助かることも
慣れたって楽じゃないよ
 
好きこそものの上手なれ
好きってひと色じゃなくて
怒ったりうんざりしたりね
しょうがねえ、やるかって
 
お湯が出るまでは冷たい
裸で縮こまっている生身
そのままでお待ちなさい
ボンウッと火種の響き
 
あーあったまるなあ
極楽極楽なんて言うんだ
はじまりはカラ元気さ
楽しくなあれ お互い様

月締めの赤

ろくでもない目に遭って
折角の休みが不意になって
遅れかけて追い銭まで…
得したことあったっけ?
 
それはわかんないですけど
まだ終わってないですよ
それだけ盛大に凹んでると
運は残るんじゃないかと
 
意外とお花畑なやつだな
なんだ、損して得取れとか
聴き飽きた説教する気か?
 
聴き飽きるほど聴くって
定着してるからですよね
ながーい目で振り返って
納得されたからですよね
 
知らねえよ まあでも
そうとでも思ってねえと
やりきれねえからだろ
負け続けたら死んじまうよ
 
ああ、そうですよ
こんな時こそお得意の
「最悪から考える」でしょ
生きて帰れてるんですもの
 
毎回イチかバチかってなあ
俺の天秤からしたらさ
どストライクの美人から
口説かれりゃトントンだな
 
ふーん そうですか…
冗談だよ どうした?
なるほどやりきれないな
赤糸で繕いつつ笑った

風邪キャッチャー

まあ遅うまですんじゃなあ
年末のはいっぺんに来るから
…飯いいです、と横になった
なんかは食べんとおえまあ
 
お義母さんと妻の低い声
具合でも悪いんじゃねえ?
うつったかなお父さんの風邪
あの男いっつももろうてきて
 
あんたなんかしちゃんねえ
食べにゃあ元気出りゃせんて
今は眠ぃんかもしれんけえ
起きたらな あんたも寝ねえ
 
方言すげえな、たまに聴くと
子守唄にしながらうとうと
冷蔵庫の音と水道のシャーと
ネギの匂いとラップのピッと
 
どれくらい寝たのだったか
催してお手洗いへ行ったら
お義父さんと鉢合わせた
あ、どうぞ いやええから
 
うんこだし悪いなと縮こまり
交替の後で響くプゥ〜は長い
あ、起きた?まだしんどい?
いや…まあそんなでもない
 
ちょっと小腹が空いたから
おうどんでもしようかなあ
ついでにどう?大丈夫なら
おー、じゃ呼ばれよっかな
 
丸天半分おぼろ昆布小ねぎ
ズズッ これおでんの残り
袋麺もおいし ん うまい
お義父さんの地獄のいびき