Okay, bad joke.

詩のドラフト倉庫

毎度馬鹿馬鹿

おしどり夫婦の大先輩
こちとら20年選手でい
お手本となるいい機会
さあさ心して聴くがいい
 
胸の内で豪語しながら
当たり障りのねえ話だ
いやんなるな我ながら
お互い様の目のお仲間
 
俺のようになれとも
なるなとも言えないけど
不機嫌そうだろうけど
祝ってるつもりなんだよ
 
そりゃま敢えて言うなら
随分長く近くにいてさ
禁断のキの字もない俺が
情けないのも多少あるが
 
ああ、いやいやいや
そういうんじゃないんだ
男は馬鹿なもんだからさ
ついなんだあいつってさ
 
自分のことは棚に上げて
ひとの妻になんぞなって
あーあなんかつまんねえ
とか思っちまうんだよね
 
もし俺がいなかったら
一生の出合いもなかった
世話になった恩返しなら
道化の甲斐もあるかもな
 
先に言っとくけど
犬も食わねえ喧嘩するよ
札止め熊五郎の堪忍袋
俺とよりは長持ちしろよ

みこしを担ぐ

かばいたい気持ちは
わからないでもなかった
わかろうと努力はしたんだ
身内としてならなんとか
 
でもねえ ご愛顧に甘えて
日陰者じゃかわいそうだって
役割を無理くり与えて出して
なあなあで認めさせるのはね
 
トホホな身内を黙って養う
そういう局面は割とよくある
自分も転ぶことはあり得る
だから責めずにもいられる
 
でもねえ チームとしてなら
どうしたって無理は出るんだ
情の前に客観的信用だからさ
なめられてるのわかるからさ
 
基本ひとりでやっていると
そういうことには疎いのかも
神棚の熊手とおんなじでしょ
いいじゃない 形だけだよ
 
そこらのちっちゃな会社でも
ちゃんとやろうとしてんだよ
罪悪感を埋める人件費扱いも
真面目な給料が払ったんだよ
 
ほらみろ言わんこっちゃない
呆れて怒りたくなる気持ち
切ることに迷い続けた苦しみ
重ねてやさしくもなる気持ち
 
担いだままの片棒と説得力
伝わる言葉の意味も変わる
なくして言えることもある
初めて立ち止まるひともいる

鏡台と舞台

この曲では涙ぐんで
この曲ではうれしそうだね
この話では真面目な顔して
この話では笑い出すんだね
 
このパスは通らなかった
このカーブで打ち取った
この時間は空いてなかった
彼女の願いは叶ったそうだ
 
自分の都合だけで味わえる
ことってあんまりなさそう
相手があるから調子が狂う
相手がいるから元気も出る
 
攻守交代
自分だって受け手になり
相手を不意に戸惑わせたり
幸せにさせたりするがいい
 
窓に映る顔を見ながら
誰かのことを考えていたら
その誰かが見つめ返した
気のせいなんかじゃないさ
 
おとぎ話のお姫様も
何かにつけさらわれるだろ
勇者の出番を作らないと
冒険が始まらないからだよ
 
矢を片手につっ走る黒子
なんでこんな役なんだよ?
その矢が射止めないと
話が終わらないからだよ
 
いりもしない役を雇うほど
運命は暇じゃないはずだろ
それを観ている側のひとも
いなきゃ声が出ないんだよ

裏打ちの受動

川に沿って走る在来線で
近いようで遠いところへ
性懲りもなくのこのこきて
手もなく元気になるわけで
 
いつもと違う何かってのは
周りについたのりしろが
とりわけ厄介に見えるんだ
欲など出すんじゃなかった
 
叶わない方が気が楽だし
疲れるから何もいらない
たらればの先は知らない
他のこともそうじゃない?
 
げんなりすると嘆くけど
稀な失敗だってあるけれど
今いたカラスは笑い顔
生きてるってそういうこと
 
存在する価値なんてない
死んだほうがましの耳鳴り
まあまあまあ 待ちなさい
ヒーローだけじゃ救えない
 
誰の助けにもなれないと
適性をすぐに見限るよりも
助けたいと奮った余力ごと
助かった側にもなれるだろ
 
未来が見えないやつがいる
暗い未来がはっきり見える
そういう不運なひともいる
どちらともわからない希望
 
次に笑うか泣くかも知らない
塗り重ねた最後を見ていたい
笑い声と拍手になるために
それぞれに運ばれてある命

ものわかりの子

指折り数えて待っていた
母の一時帰宅は延期になった
仕方ないでしょ やだああ
とんもころし抱えて地団駄
 
一緒になだめて一緒に泣く
自分の中の子どもが大人ぶる
世の中そういうもんだろう
ままならないことだってある
 
どうしていやなの?
いやだからいやなの
そんなの理由になんないよ
りゆうわかんない もおお
 
眉をひそめる優等生
世間知らずの品行方正
ふりかざして叱りつけたい
迷惑でしょ 我慢しなさい
 
もしかして忘れちゃったの
みんなの中にもいるんだよ
話が通じない泣き虫さんと
感情むき出しのはだかんぼ
 
信じられない あり得ない
許せない 罰が当たればいい
あれ もしかしてそっち?
幼稚園児に戻るスイッチ
 
98点の答案の2点にあーあ
ひとの幸せにはうんざりだわ
スタンバイ済それみたことか
万馬券ばかり続くもんですか
 
どのみちおこちゃまならば
いやだからいやだの素直さは
よーしよしと許されながら
おぶわれて来たらせんの川

ポゼッションの沼

自分の家のはずなのに
どうしてこうも居心地が悪い
自分の妻子のはずなのに
どうしてこうも話が通じない
 
オフの日のはずなのに
なんだってこんなに忙しい
必ず返すって言ったじゃない
踏み倒されそうなへそくり
 
あなたはあたしのものでしょ
君も仕事をなくせばわかるよ
私の自由と青春を返してよ
何も持っては行けないあの世
 
ええい やめだやめだ
自分の所有物なんて考えは
ろくなことにならないからな
あれもこれも誰かのものさ
 
手放したくないと言うのは
自分のものだと思うからだ
いい思いをしたもんだから
損するような気がするのさ
 
全ての持ち主を固定したら
そこから何か生まれるのか
金庫にしまったお高い絵画
伝えたいことはなんだった
 
わらしべ長者にしたって
鼠穴にしたって 時間でさえ
取り替えなきゃはしたで
今の持ち物は何かになる前
 
ままならないことばかり
自分の人生を生きるべき?
そんなものは元々ないし
全部預かりと決めればいい

いたわりの隔たり

不義理をしている親戚の
電話をうっかり取ると
のっけに父の下着サイズと
若いひとは綿を着ない話と
 
連れ添いが先日旅立って
本人も癌の手術に肺の影
身辺整理の真っ最中で
新品の肌着が気になる目
 
大変でしたねと言ったら
へえもう…せえじゃけどな
まあ もうよう看たから
お父さんも長かったからな
 
父にレントゲンの話を訊く
それも目的だったらしく
携帯を薦めると苦笑いする
ナニしたらお金がかかろう
 
あんたはどうしよんで今
まだ車は二台持っとんかな
そりゃお父さんが大変じゃ
元気でおらにゃいけまあ
 
のそのそ入ってきた気配で
あ、母に代わりますんで
お悔やみも見舞いも半端で
ひとの電話を借りて待たせ
 
参列無用と気遣われた葬儀
母の不調解説の舌はよく回り
予定より早めに宅配が届き
受取は母とのルールがあり
 
またかけるわ ほんならな
二階で洗濯物を干しながら
今は亡き祖母にもらった
ロバのぬいぐるみをなでた